インドのオンライン教育企業Physicswallah(フィジックスウォラ)が11月18日、同国の株式市場で鮮烈なデビューを果たし、2人の新たなビリオネアを送り出した。創業者兼CEOのアラク・パンデイは33歳でインド最年少のビリオネアとなった。また共同創業者で取締役のプラティーク・ブーブ(37)も、保有資産が10億ドル(約1560億円。1ドル=156円換算)を突破した。
エドテック新興PhysicsWallahが上場し株価急騰、合計約608億円を調達
首都デリー近郊のノイダを拠点とするPhysicsWallahは、学校向けの講座に加えて、工学系や医科大学の入試に向けた試験対策講座を提供している。同社は18日、インドの取引所に上場し、初値はIPO(新規株式公開)価格を42%上回った。PhysicsWallahはオンライン講座に加えて国内各地のオフライン拠点でも授業を展開しており、有料アプリの受講生は約1000万人。郵便番号ベースでインド国内の98%をカバーしていると述べている。
同社は今回のIPOで、新株発行と2人の共同創業者による保有株の売却を組み合わせ、合計3億9000万ドル(約608億円)を調達した。調達資金は、オフライン拠点の拡充とテクノロジーやマーケティング施策の強化、買収戦略の推進に充てられる。
積極的な買収で事業基盤を強化、教育内容を最優先する独自の戦略が成長を支える
6月時点で、Physicswallahは200を超えるアクティブなYouTubeチャンネルを運営し、総登録者数は1億人近くに上る。同社は近年積極的に買収を進めており、2022年にはインド系移民コミュニティの取り込みを狙い、アラブ首長国連邦(UAE)の試験対策スタートアップKnowledge Planet(ナレッジ・プラネット)を非公開額で買収した。その1年後の2023年には、ケララ州の教育プラットフォームXylem Learningの50%を50億ルピー(約88億円。1ルピー=1.76円換算)で取得。2025年に入ってからも、インドの公務員試験向けの試験対策企業の株式40%を取得している。
Physicswallahの収益は2023年度の74億ルピー(約130億円)から2025年度にはほぼ290億ルピー(約510億円)へと大きく伸びたが、損失も同じ期間に10億ルピー(約17億6000万円)弱から24億ルピー(約42億円)へと膨らんだ。それでも、アナリストはこの赤字をそれほど問題視していない。オンライン教育企業TutorVistaを共同創業し、2013年に世界的教育企業ピアソンへ売却した連続起業家K・ガネーシュは、「Physicswallahのモデルは、資金を調達し、マーケティングや顧客獲得に投じてリーチを広げ、その後に教育内容を整えるという一般的な手法とは逆だ。彼らはまず教育内容があり、次に流通を整え、最後に資本を入れる。この順番が非常に新鮮だ」と語る。そして「彼らは、顧客を獲得し、定着させ、収益化につなげる“フライホイール”をうまく回している」とも評価した。



