フォーブスは11月18日、優れた最高技術責任者(CTO)、最高情報責任者(CIO)、最高情報セキュリティ責任者(CISO)を表彰する年次リスト「2025 CIO Next」を発表した。このリストには、50人の優れたリーダーが選ばれる。本稿で紹介するダニエル・シュメルキンもその1人だ。
5年前に経営破綻した米衣料品チェーンJ.Crew(Jクルー)は、テクノロジー施策を追い風に着実な復活を遂げており、その立役者となった人物が2019年6月に最高情報責任者(CIO)に就いたシュメルキンなのだ。
2019年6月に最高情報責任者(CIO)に就任、2020年に破産し復活をテクノロジーで支える
2000年代に“プレッピー・シック”なスタイルで知られたJ.Crewは、2015年頃から売上が落ち込み始め、店舗閉鎖や大量解雇に踏み切る事態に追い込まれていった。そして、2020年に新型コロナのパンデミックが米国を襲うと、同社は他の多数の小売企業と並んで連邦破産法11条の適用を申請した。
しかし、それから5年、J.Crewはこの厳しい時代を乗り越えてカムバックした。2019年6月に最高情報責任者(CIO)となったダニエル・シュメルキンは、その立て直しで中心的な役割を担った人物だ。彼女は、それ以前に高級ブランドのCoach(コーチ)とKate Spade(ケイト・スペード)で8年間にわたりIT部門を率いており、その経験を生かしてJ.Crewの再生をテクノロジー面から支えた。
2024年、同社の売上高は推定27億ドル(約4212億円。1ドル=156円換算)に達し、パンデミック期の推定年間売上から6億ドル(約936億円)増加した。J.CrewやMadewell、J.Crew Factoryを傘下に持つJ.Crewグループの実店舗は現在660店を超えており、パンデミック前の491店から大幅に増えている。
売上の過半数を支えるEC事業と、AIの増収効果とコスト削減で運営費を自ら賄うデータ分析チーム
こうした現在のJ.Crewの売上の半分以上を支えているのは、eコマース事業だ。この事業は、シュメルキンがこの5年間で構築したテクノロジー基盤に支えられている。この仕組みは、社員と顧客双方のエンゲージメントを高めるための、より迅速で、より高度にパーソナライズされたエクスペリエンスをもたらすもので、しかも自己循環型でもある。彼女が率いるデータサイエンスチームは、人工知能(AI)による増収効果と効率化によるコスト削減効果によってチームの運営費をすべて内部で賄っている。
「ここ数年は、テクノロジー基盤の整備に徹し、すべての顧客体験を一から作り直すとともに、それを支えるソリューションを構築してきた。膨大な情報チャネルが発する無数のシグナルをどう読み取り、よりシンプルで意味のあるソリューションへと落とし込むかに多くの時間を注いできた」とシュメルキンは語る。



