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2025.11.26 08:10

「トランプ政権はチャンス」逆風を追い風にするクライメートテック:西和田浩平

西和田浩平|アスエネ

西和田浩平|アスエネ

11月25日発売のForbes JAPAN2026年1月号の特集「日本の起業家ランキング2026」で5位に輝いたのは、アスエネの西和田浩平だ。

大胆なM&A戦略で急速に事業規模を拡大させている同社。この一年でグループ全体の売り上げは2.2倍になった。


クライメートテック・スタートアップのアスエネが、大胆なM&A戦略で急速に事業規模を拡大させている。この一年ほどで国内外6社を買収し(事業承継を含む)、グループ全体の売り上げは前年から2.2倍になった。

企業のCO2排出量を可視化するクラウドサービスを主軸として、排出削減のコンサルティング、AIを駆使したエネルギーマネジメント、カーボンクレジット・排出権取引所、非財務情報の第三者保証・検証まで、脱炭素のワンストップソリューションを展開。提供するサービス群の導入企業数は3万社を超え、東証プライム上場企業における導入比率は約40%に達している。海外拠点も拡大し、既存の米国ロサンゼルスとシンガポールに加え、25年4月には英国ロンドンにも進出した。

M&Aで傘下に収めたうち2社は、米国のスタートアップだ。「トランプ政権は、我々にとってチャンスだと思っています」と代表取締役CEOの西和田浩平は言う。2025年1月に誕生した第2次トランプ政権は、民主党政権が推進してきた脱炭素政策を次々と撤廃。米国の関連スタートアップの企業評価額が割安な水準に下がった。「M&Aをしやすくなっている。今が仕掛けどきなんです」。

一方で、この一年で最も象徴的だった案件として、西和田は三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)との事業承継M&Aを挙げる。SMBCが運営していたCO2排出量算定・削減支援クラウドサービス「Sustana(サスタナ)」の全顧客をアスエネが引き継ぎ、代わりにSMBCはアスエネの株式を取得した。スタートアップによるスタートアップのM&Aはこの数年で件数が拡大傾向にあるが、大企業の事業を引き継ぐケースはめずらしい。

発端は3年前、22年11月にエジプトで開催されたCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)だった。視察団の一員として参加した西和田は、当時SMBCのグループCSuO(Chief Sustainability Officer)で、現在はグループCFO/CSOの伊藤文彦と1週間行動を共にすることに。面談や夜の食事を重ねるなかで、西和田は思いを伝えた。「日本を代表する金融機関と一緒に大きなことをやって、グローバル市場を取りに行きたい」。

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文=加藤智朗 写真=小田駿一 ヘアメイク=yoboon

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