11月25日発売のForbes JAPAN2026年1月号の特集「日本の起業家ランキング2026」で4位に輝いたのは、まん福ホールディングスの加藤智治だ。
食に特化した中小企業の事業承継プラットフォームを展開する同社は、創業4年強で14社を承継。連結売り上げも100億円を超えた。
食に特化した中小企業の事業承継プラットフォームを展開するまん福ホールディングスにとって、2025年は新たなフェーズへと飛躍した1年だった。21年の創業以降、後継者不足に悩む食関連企業を連続して買収する、いわゆるロールアップM&Aの手法は、オールドエコノミーでの「やり方のイノベーション」と注目を集め、わずか4年強で14社を承継。連結売り上げも100億円を超えた。
25年2月、米国ニューヨークでテイクアウト寿司店を2店舗経営するOSAKANAの事業承継に成功。これが、「未来のマーケット」と位置付ける海外進出一号となる。何しろ海外では、日本食レストラン数がこの10年間で約3.4倍に増えている。
「OSAKANAを承継してみて、日本の食がもつ可能性をあらためて感じましたし、仮に国内マーケットが縮小しても、海外市場での成長が見込める。これは、国内における事業承継をするうえでもプラスに働く」と、社長の加藤智治はこの足がかりに数字以上の期待を示す。
スシローやゼビオといった大企業の経営を担い結果も出してきた加藤がまん福ホールディングスを立ち上げたのは、日本の食産業の崩壊を止めたいという思いからだ。日本の食料自給率は40%を切っており、担い手である一次生産者の人口は過去20年間で半減。食の魅力を届ける飲食店の倒産件数も増え続けている。
そしてもうひとつ、「これまで多くの経営者に会うなかで、ゼロイチの事業をつくってきた起業家に共通する経験に裏打ちされた深い人間味に、憧れとコンプレックスがありました」と加藤は言う。
もちろん、志や思いだけで事業は成り立たない。だからこそ、前述の海外需要を背景にしながら、事業承継に新たな選択肢をもち込んだ。これまでは、同業の傘下に入るか、ファンドに売却して再生を図るかの2択が主流だった。そこに、承継した企業の持ち味を生かしながら価値を高め、決して売却しないという“第3のモデル”を打ち立てたのだ。
そして、事業承継した「点」である企業を、「熊本肉共和国」「北海道寿司共和国」といったかたちで、地域ごとに連携する「面」でとらえて強化する独自戦略を打ち出した。だから、連続買収を行うロールアップ企業といえど、いい会社を安く買い、やみくもに足し算しながら事業拡大していくモデルとは目的を異にする。



