さらにいえば、このロールアップの向こうに食のナショナルチェーンの構築があるわけでもない。「誰もが手間なく、早くつくれ、統一された単一の味」という効率化は、事業拡大には適しているが、「それでは日本の食産業を守れない」と加藤は考える。
「日本の食の魅力であり強さは、各地の食文化であり、地域ごとの彩り。非効率に見えますが、“おらが町の味”を守ることが、結果的に日本全体の食産業を強くすると思うのです」。
地域ごとに事業承継をした企業をひとつの「共和国」にまとめ、各地の色を守る。この姿勢が共感を呼び、今では各地域の金融機関がこぞってまん福ホールディングスの支援に身を乗り出している。
新たなフェーズではプラットフォームを強化しながら、関西や中四国、北陸にも新たな「共和国」を建てる方針。近年、減り続けている調理師の育成にも乗り出す予定だという。
「大変ですけど、やりがいがありますよ。自分自身は、今がいちばん成長している実感がある」という加藤。満を持しての起業から4年あまり。彼の挑戦はこれからが本番だ。
加藤智治◎東京大学大学院卒業後、ドイツ銀行やマッキンゼーで金融・経営コンサルを経験。スシローやゼビオで経営改革・社長を務め、2021年まん福HD設立。カカクコム社外取締役。東大ウォリアーズクラブ代表理事を務める。


