2008年にGoogleに入社、「Google Wave」「Google Plus」の失敗を経験
教員である医師の父と建築家の母を持つプラサンナは、インドのバンガロールで育ち、当初はビデオゲームを作りたいと考えていた。2003年にミルウォーキーのマルケット大学を卒業した彼は、2008年にグーグルに入社。そこで彼は、一部の熱狂的支持を得ながらも1年後に終了した協働ツール「Google Wave」の開発に携わった。また、同じ運命をたどったグーグルのソーシャルネットワーク「Google Plus」にも参加していた(「これもまた壮大な失敗だった」と彼は振り返る)。
2015年Blockに参加、アンソロピックが開発した標準規格MCPの普及で貢献
プラサンナは2015年にBlockへ加わって以降、いくつもの成果を挙げてきた。直近の成果の1つが、アンソロピックが開発したオープンソース標準規格「Model Context Protocol(MCP)」に関連したものだ。MCPは、アンソロピックのClaudeやOpenAIのChatGPTなどが、GoogleカレンダーやFigmaデザインのような外部データやツールにアクセスできるようにする共通仕様だ。
このプロトコルを共同開発したアンソロピックのデイビッド・ソリア・パラは、「ダンジ(プラサンナ)と彼のチームはMCPを採用しただけではなく、エージェントが開発者の実際のツールとどう接続すべきかについて、業界全体の視野を広げる役割を果たした」と評価する。MCPはすでにグーグルやOpenAIをはじめ複数の大企業に採用されている。「MCPは、瓶の中の脳のようなモデルに“腕と脚”を与え、現実世界で動けるようにする仕組みだ」とプラサンナは説明する。
Block従業員の3分の2がGooseを日常的に利用、1人あたり週10時間の業務削減を実現
そして現在、脚光を浴びているのがGooseだ。企業の現場ではAIエージェントが一大ブームとなっており、マッキンゼーが11月に公表した調査では、6割超の企業が少なくともエージェントの実験を始めているという。ただし、本格活用はまだ進んでいない。多くの企業は1〜2部門での運用にとどまり、全社規模で活用している企業は1割程度にすぎない。
だが「Blockは違う」とプラサンナは言う。現在、同社の1万人超の従業員のおよそ3分の2が週1回以上Gooseを使っており、1人あたり週8〜10時間の時間を節約していると彼は話す。プラサンナの狙いは、社員の効率を高めることだけではなく、Blockを再び「先端テクノロジーを作る企業」に戻すことにもある。「私はBlockをずっと“テクノロジー企業”だと見てきた。かつてはGoogleやUber、Facebookと並んで語られる存在だった」と彼は言う。
AIネイティブ企業への転換を図り、テクノロジーの最先端へ
しかしその後、Blockはフィンテックや金融サービスの企業として認知されるようになり、「アイデンティティが少しぶれた」とプラサンナは感じている。現在もBlockの時価総額は380億ドル(約6兆円。1ドル=157円換算)にのぼり、第3四半期の粗利益は前年同期比18%増の26億ドル(約4082億円)まで拡大した。それでも株価は年初から21%下落し、2021年のピークからは4分の3を失った。
プラサンナは、この状況を打開する道は「AIネイティブ企業」になることだと考えている。これは彼がドーシーに送ったメモの中で最初に示した考えでもある。「私の最大の目標は、Blockをテクノロジーの最先端のリーダーへ立て直すことだ」と彼は言う。すでにGooseという武器を手にしたBlockが次に探すのは、“黄金の卵”だ。


