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2025.11.24 08:00

OpenAI投資元が語る、アジアAI市場の未来とシンガポール・韓国・台湾・インド

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韓国──ロボティクスと開発者コミュニティを擁する産業横断型AIハブと位置付け

ブロンドーは、シンガポール以外では韓国、台湾、インドの3カ国を、「今後AIハブとして成長する有力市場」に挙げている。彼は、とりわけ韓国が、自動車、物流、造船などの幅広い分野で活用されるAIロボット──ヒューマノイドに限らず、あらゆるタイプのロボット──の中心的な役割を担うと見ている。「韓国は、AIの強みとロボティクスの強みを組み合わせて、本当に機能する価値あるものに仕上げるチャンスを持っている」と彼は語る。

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韓国の大手企業はすでにロボティクスに深く関わっている。サムスン電子は昨年、Rainbow Robotics(レインボーロボティクス)に約1億8000万ドル(約283億円)を投じて筆頭株主となった。現代自動車も2020年、約11億ドル(約1727億円)と評価された“犬型ロボット”メーカーのボストン・ダイナミクスの支配権を、ソフトバンクグループから取得した。また、斗山グループは2023年、協働ロボット事業の斗山ロボティクスを上場させ、3億1200万ドル(約490億円)を調達した。このIPOは同年の韓国最大の規模だった。

開発者コミュニティは、世界でも最も強力な部類に入る

OpenAIは2025年、韓国の首都ソウルに拠点を開設した。韓国は、米国を除けば、ChatGPTの有料加入者数が最も多い。一方、アンソロピックも顧客であるSKテレコムやリーガルテック企業Law&Companyに近づくため、2026年初めにソウルオフィスを開設予定だ。「韓国の開発者コミュニティは、世界でも最も強力な部類に入る。この国のエンジニアは現在、Claude Codeの利用で世界トップに立っており、市場の技術力と導入の深さを象徴している」とアンソロピックは声明で述べている。

台湾──世界最先端のハードウェア産業を基盤に、AI対応デバイスの専門性を備える人材が育つ

ブロンドーは、世界最先端のハードウェア産業を抱える台湾にも強い期待を寄せている。フォックスコンやクアンタ、ウィストロンなどの大手電子機器メーカーは台湾を拠点にしており、彼は「こうした企業はAI関連ハードの分野へと事業の幅を広げられる」と見ている。

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AIを組み込んだハードウェアの開発に携わる人材が増えることで、ブロンドーは新たな層のAI人材が育つと考えている。「3〜4年後の台湾は、ハードウェアだけでなく、AI対応デバイス全般の専門性を身に付けるのに非常に面白い場所になる」と彼は語る。

インド──アウトソーシングと政府支援により、世界最大級のAI利用市場の中心地へ

インドについては、世界最大規模となる2500億ドル(約39.3兆円)のアウトソーシング産業がAIによる移行期にあり、新たなAI人材が生まれている点だ。「現在は、ソフトウェアエンジニアのような“人間ベースの知性”が中心だが、その一部は“機械の知性”へ移行していくだろう」と彼は言う。インドの大手アウトソーシング企業──ウィプロ、インフォシス、HCLテクノロジーズ、タタ・コンサルタンシー・サービシズ──はいずれもコールセンターを代替するチャットボットやAIソリューションへの投資を進めている。

ChatGPTを利用する学生の数では世界最多、Claudeのユーザー数は世界2位

OpenAIは年末までにニューデリーに拠点を開設する予定だ。同国のChatGPTのユーザー数は世界2位で、ChatGPTを利用する学生の数では世界最多となる。「インドにはグローバルなAIリーダーとなる条件がすべて揃っている。優れたテック人材、世界水準の開発者エコシステム、そして『インドAIミッション』による政府の強力な支援だ」とアルトマンは声明で述べている。

アンソロピックも来年初め、高度IT産業の中心地であるバンガロールに拠点を設ける計画だ。インドは同社のチャットボットClaudeのユーザー数でも世界2位となっている。「インドは技術人材の規模が圧倒的で、AIの恩恵を社会の一部にとどめず、国全体に広げようという政府の姿勢が明確だ」と、アンソロピックの共同創業者兼CEOのダリオ・アモデイは声明で述べた。

インフォシスの共同創業者でビリオネアのナンダン・ニレカニも、2025年4月のグローバル・テクノロジー・サミットで「インドは世界の“AI利用”の中心地になる」と語っていた。「インドは、現段階で3〜7年前の中国に近い位置にいる。この国の価値は、AI分野全体が巨大になることが確実な点にある」とブロンドーは語った。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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