起業家

2025.11.25 09:00

バブル崩壊に備える投資家が注目、損失を回避する「バッファーETF」を生んだ起業家

Shutterstock.com

ETF事業で成功を収め引退していた創業者が、ストラクチャード商品のETF化で再起を果たす

Innovatorは、ボンドとサザードにとって初めてのETF事業ではない。2人は1990年代にFirst Trustで共に働いた仲で、その後ボンドはNuveenでプロダクト・マーケティングを統括するポジションに移った。その頃、運用資産1.4兆ドル(約218.4兆円)規模のNuveenはETF事業を立ち上げようとしていたが、その計画は頓挫した。そこでボンドは「ETFは絶対にホームランになる」と確信し、自分がその事業を買い取って始めると申し出たのだ。彼はマーケティングに強い自分を補完してくれるリサーチ畑出身のサザードを呼び寄せ、2002年にPowerShares Capital Managementを創業した。

advertisement

同社は、設立から4年で36本のETFを立ち上げ、クリーンエネルギー関連株や水処理企業など、ニッチな領域をパッケージ化した商品で35億ドル(約5500億円)の運用資産を集めた。そして2006年にPowerSharesは、Amvescap(現在のインベスコ)に6000万ドル(約94億円)の前払いとアーンアウトを含む総額2億6000万ドル(約406億円)で売却された。

ボンドとサザードは、インベスコ傘下でもPowerSharesの事業拡大を続けていたが、2人とも2011年に退社した。サザードは不動産投資会社を立ち上げ、ボンドは狩猟と釣りに打ち込んだ。そんな生活が続く中、2015年末にサザードから1本の電話が入り、ボンドは仕事に戻ることにした。サザードは彼に、担当アドバイザーから“下落耐性を重視したストラクチャード保険商品”を購入したと告げたのだった。

「その時彼は、『こんな商品がETFで提供されていないなんて、本当に不思議だ』と言ったんだ」とボンドは振り返る。

advertisement

2017年、2人は少額でInnovator Managementを買収した。同社はすでに、Investor’s Business Dailyの成長株50銘柄指数に連動する「Innovator IBD 50 ETF」を運用していたため、煩雑でコストのかかるファンド設立の手続きをスキップできたからだ。そして1年以内に、Innovatorは世界初のバッファーETFを上場させた。

バッファーETF市場が急拡大し、模倣ファンドと資金流入が加速する

Innovatorはその後、数多くの模倣者を生み、First Trustやアリアンツなどがその後を追った。バッファーETF業界の運用資産は現在、750億ドル(約11.7兆円)にまで膨らんでいる。定義済みアウトカム型の戦略には、今年だけで108億ドル(約1.7兆円)の資金が流入しており、InnovatorとFirst Trustはいずれも40億ドル(約6200億円)超の流入を得ている。

デュアル型ETFとInnovator売却観測、安心を売るビジネスの行方

悲観的な投資家に向けて、最近Innovatorは「デュアル・ダイレクショナル(dual directional)」ETFを投入した。このファンドは、追加のオプションを組み込むことで、市場が下落したときに投資家にプラスのリターンをもたらす仕組みになっている。7月に始まった「Equity Dual Directional 15 Buffer ETF」(DDFL)は、S&P500が最大15%下落した場合、投資家はゼロどころか15%のプラスのリターンを得られる。一方で、株価が上昇した場合の上限は8.8%に制限される。

ボンドには拡大のためのアイデアが尽きないが、同時に8年目を迎えた自社の売却先も探しており、取引成立は目前かもしれない。フォーブスの試算では、このバブル対策ETF事業は最大20億ドル(約3100億円)で売却できる可能性がある。投資家が安心して眠れるための金融商品を投資家に売るビジネスでは、ボンドとサザードのような本物のイノベーターこそが、常に最大の果実を手にすることになる。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事