オプション取引の活用で損失を限定し、毎月新たなファンドを発行する独自の仕組みを持つ
Innovatorの人気シリーズ「U.S. Equity Power Buffer ETF」は現在、合計で100億ドル(約1.6兆円)の運用資産を抱えており、PJAN、PFEB、PMARといったティッカーで毎月新たに発行されている。このETFは、S&P500が12カ月間で被る損失のうち最初の15%を投資家に代わって吸収する仕組みだ。各ファンドは、1年の運用期間が終わると保有するオプションをすべて新しい契約に乗り換える。
具体的な仕組みはこうだ。Innovatorは毎月、S&P500の現在値でプットオプションを買い、その価格の15%下でプットオプションを売り、満期はいずれも1年後に設定する。そのうえで、バッファー分のコストを相殺するために、可能な限りアウト・オブ・ザ・マネー(OTM)のコールオプションを売り、その結果として上昇の上限(アップサイドキャップ)が生まれる。この上限は、オプション価格の変動に応じて毎月変わる(プットオプションはあらかじめ決めた価格で売る権利、コールオプションは決めた価格で買う権利を意味する)。
たとえば、暦年ごとの15%バッファーETFであるPJANは、2025年の上限が12%だ。つまり、S&P500の14.5%の上昇率には届かず、年内のこれ以上の上昇の恩恵は受けられない。2024年は13.5%にとどまり、S&P500の23%上昇を下回った。2023年も18%で、市場の24.3%には届かなかった。だが、2022年は市場が約20%下落した一方で、PJAN の損失は5%に抑えられた。
これらを合計すると、PJANの2019年の立ち上げ以降の年率リターンは9.3%だ。S&P500の年率15.6%には大きく見劣りするが、もしこの熱狂的な強気相場が反転する局面になれば、このファンドの投資家は大きな下落から身を守れることになる。
リタイア世代の老後資産、下落耐性ETFで増やすより守る発想を重視する
Innovatorは、9%のバッファーを設定する代わりに上昇余地を大きくした商品や、30%のバッファーと引き換えに上限が低くなる商品、100%のバッファーを備えた商品まで揃えている。2023年7月に投入された100%バッファー型ファンドの今年の上限は、およそ7%に設定されている。S&P500に連動するもの以外にも、Nasdaq100、ラッセル2000、先進国株式や新興国株式の指数に連動するバッファーETFも提供している。こうしたETFの信託報酬は高めで、経費率は0.79〜0.89%に及ぶ。
「これら商品の対象は、すでにリタイアしている人や、リタイア間近の人だ。彼らは資産を倍増させる必要はない。大事なのはお金を守ること、そしてそのお金を取り崩して生活できることだ」と、Innovatorの社長を務めるサザードは語る。「市場が史上最高値圏にある今は、率直に言って、この商品を買うには一番いいタイミングの1つだ。下落耐性を加えるにはちょうどいい」。


