「多くの施設は、多少なりとも内部に入れるものだが、この作品に出てくるのは、すべて厳重なセキュリティ施設だ。しかも登場人物は、スクリーン越しに別の場所とやり取りしている。そこで僕たちはすぐに悟った。全部をステージに建て込み、同時に撮影できる状態にする必要があることに。カメラは40台も使った。普通の作品なら『ロケすればいいだろう』となるけど、本当に使えた実在の施設は米連邦緊急事態管理庁(FEMA)だけで、あとはすべてセットを組んだ。少しでも不正確に描けば、関係者に失礼だと考えた」
彼らは実際に、米戦略軍(STRATCOM)の施設や、ホワイトハウスそしてシチュエーションルームも視察したという。
「全部見せてもらえたけれど、もうその時点でセットの建設は進んでいた。現場で得た細部の手がかりはすごく役立ったけど、カメラの持ち込みは禁止だったし、鉛筆すら持てなかった。だから必死に記憶するしかなかった。STRATCOMに入れたのは12分間、シチュエーションルームは3分間。部屋全体を目でスキャンして、外に出た瞬間に電話で全部口述するという作業だった。これはものすごく重要な物語だから、正確さは絶対に必要だった。キャスリンは360度どこから見ても嘘のない画を求める監督だ。後日、音響ステージに組んだシチュエーションルームに実際の将官2人が入ってきたとき、『ああ、本物みたいだ』と言ったんだ。彼らの表情を見た瞬間、“これは彼らへの敬意の示し方として正しかった”と確信した」
編集担当のバクスターは、ビグロー監督の“人脈”についてこう付け加えた。「キャスリンは本当に、信じられないほどの人たちに直接電話できるんだ。普通なら絶対に会えない人物が、彼女のひと言で案内してくれる。編集室にいるとき、キャスリンが3つ星の将軍にテキストを送って相談していたこともあった」
「私たちは本当に恵まれていた」と、ビグロー監督は締めくくる。
「関係者がみんな、とにかく正確で、できる限り本物に近いものにしてほしいと願ってくれていた。この作品が描いているのは彼らの世界だ。私たちがその世界を共有しようとする以上、正しく描かなければ意味がない。この作品のテーマそのものを信じて力を貸してくれた彼らには本当に感謝している」と監督は語った。


