AI

2025.11.21 13:30

DeepL CEOが語る、OpenAI他「ビッグテックに勝つ戦略」と欧州がもつべき危機感

11月12日、欧州最大級のテクノロジーカンファレンス「Web Summit 2025」に登壇したDeepL CEOのヤレック・クテロフスキー(Ramsey Cardy/Sportsfile for Web Summit via Getty Images)

11月12日、欧州最大級のテクノロジーカンファレンス「Web Summit 2025」に登壇したDeepL CEOのヤレック・クテロフスキー(Ramsey Cardy/Sportsfile for Web Summit via Getty Images)

AI領域で「欧州発のチャンピオン」と呼べる企業は多くないが、その代表格として挙げられるのがドイツ企業のDeepLだ。2017年創業の同社は、人工ニューラルネットワークを活用した翻訳サービスをわずか数年でリリースし、その精度はグーグルやマイクロソフトといった米国テック大手に匹敵し、時に上回るとも評価されている。

そのDeepLは、AIエージェント「DeepL Agent」を発表し、翻訳の枠を超えた新領域へと踏み出した。同サービスは、企業における反復的かつ非効率な業務を自動化することを支援するものだ。また、CEO(最高経営責任者)のヤレック・クテロフスキーは、ドイツ政府の「技術・イノベーション戦略グループ」に参画し、同国のAI政策立案に関与することになった。

筆者は、リスボンで開催された欧州最大級のテクノロジーカンファレンス「Web Summit」で、クテロフスキーにインタビューする機会を得た。今年のイベントには3日間で7万人超が来場した。インタビューでは、クテロフスキーがイノベーションの阻害要因として懸念するEUのAI法から、翻訳市場で台頭する他スタートアップのLLM(大規模言語モデル)との競争まで、幅広いテーマが語られた。

翻訳領域を超える挑戦

DeepLはこれまで、一貫して翻訳に特化する姿勢を掲げ、その徹底こそが同社の卓越した精度を支えているとされてきた。では、同社が新たにリリースしたDeepL Agentは、この理念とどのように整合するのか。

「それはもっともな指摘であり、社内でも議論を重ねてきた」とクテロフスキーは述べた。彼は、特定領域へのフォーカスは重要であり、守られるべきだとした上で、DeepLはすでに複数事業を並行展開できる段階へと成長したと強調する。「AI領域では、次々と新しい技術が登場して人々を興奮させる一方、それらが実際に機能し、価値を生むかどうかは必ずしも明確ではない」と彼は指摘する。

事業領域拡大を後押しした大きな要因の一つが、顧客から寄せられた要望だった。「DeepLはAIの扱いに長けており、他の分野でも支援してほしい。他社からの提案は山ほど来るが、信頼できない」という声が相次いだという。DeepL Agentという新たな方向性は、同社の技術革新への意欲と顧客ニーズが結びついた結果として生まれた。

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編集=朝香実

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