政治

2025.11.19 10:30

制裁下でロシア事業を続ける米石油大手SLB 現政権の「曖昧さ」を活用か

米テキサス州ヒューストンにあるSLB本社。2024年4月13日撮影(Getty Images)

プラストゥン教授は、SLBがハリバートンやベーカーヒューズといった欧米競合他社のロシアからの撤退によって生じた機会を単に捉えたのだと指摘。その上で、「多くの関係者が見過ごしがちな」規制環境を利用して制裁を回避していると説明した。

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この状況は2025年に入っても続いていた。ダラスの報告書は、米国の新たな制裁が発効してから1カ月後の2月11日に、SLBが自社設計に基づく機器部品の製造業者をロシア国内で募集し始めたことを明らかにした。生産ラインは単純明快だ。ロシアの請負業者がSLB設計に基づいて部品を製造し、同国中部チュメニ州の工場で組み立てられ、完成品は国内の油田に配備され、SLB社員が保守することになる。

制裁の抜け穴

SLBは複数の大陸にまたがる複雑な企業構造を通じて事業を展開しており、ロシア部門は正式には欧州の子会社によって監督されている。1月の制裁では、米国民が「直接的または間接的に」ロシアに油田サービスを提供することが明確に禁止されているものの、この外国企業による契約のせいで米国の直接的な執行が困難になっている。

SLBのオリビエ・ルプーシュ最高経営責任者(CEO)は1月、新たな制裁措置への対応について検討中だとした上で、外国からロシアへの製品や技術の供給停止など、SLBが自主的に講じた措置は「新たな制裁に沿ったもの」だと説明した。

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新たな制裁が導入されても、それが厳格に執行されているわけではない。英コンサルティング企業インサイト・フォワードのトレストン・ウィート最高地政学責任者(CGO)は筆者の取材に対し、こう語った。「ドナルド・トランプ政権下では、執行の優先事項の変化や企業のロビー活動、制裁順守の曖昧さに対する寛容な姿勢により、SLBに対する監視が強化される可能性は低い。ホワイトハウスは司法省の作業部会『クレプトキャプチャー』(訳注:「窃盗犯の逮捕」の意で、ロシアの新興財閥オリガルヒの制裁逃れを摘発する特別部会)のような体制を縮小し、焦点をより広範な戦略的・経済的目標に移すことで、積極的な制裁執行を後回しにしている。この組織的な縮小により、SLBのロシア事業のような境界線上の事件に対する綿密な調査の余地がなくなっている」。その上で、ウィートCGOは、米国の大手エネルギー企業は現政権の「厳格な執行より柔軟性と取引を重視する政治環境」の恩恵を受けており、SLBが規制のグレーゾーンで活動する余地を生み出していると指摘した。

西側の技術支援がなければ、ロシアの油田の多くは急速に劣化するだろう。同国の油田の劣化は、ウクライナ軍による無人機(ドローン)攻撃の継続によって既に加速している。ウクライナの物理的な圧力は、西側諸国による強力な制裁と連動した時に最も効果を発揮する。無人機がロシアの石油生産に損害を与えたとしても、西側諸国の企業がその復旧を支援する立場にはない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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