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2025.11.20 10:00

クアルコムのAI PC戦略 「テクノロジーのルーツが違う」Snapdragon Xが勢力図を変える

クアルコム日本法人のPCビジネス統括本部長、井田晶也氏にインタビューした

クアルコム日本法人のPCビジネス統括本部長、井田晶也氏にインタビューした

2024年、マイクロソフトは次世代AIを搭載したWindows PCを「Copilot+ PC」として新しく立ち上げた。この機を境にAI PCの市場が大きな転換期を迎えている。心臓部であるSoC、つまりはCPUにGPU、メモリコントローラなど複数コンポーネントをシステム化したチップセットの内部に、AI処理に特化する専用コア「NPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)」が組み込まれるようになり、PCがクラウドに頼らず高度なAI処理をデバイス上で実行できるようになったのだ。

この大きな変革の中心に立つのが米国のクアルコムである。同社はモバイル向けSoCのSnapdragon(スナップドラゴン)シリーズで大きなシェアを持つ半導体メーカーとして知られる。今回はクアルコム日本法人でPCビジネスの統括本部長を務める井田晶也氏に、AI時代のPCが向かう進化の展望を聞いた。

クアルコムのPC戦略もSnapdragonが牽引する

クアルコムは2023年の秋に、Armアーキテクチャを採用するコンピューティングデバイス(PC)向けの新しいSoCである「Snapdragon X Elite」シリーズを発表した。Windows PC市場において、従来はインテルとAMDが牽引してきたx86アーキテクチャが支配的だった。かたや、スマートフォンのようなモバイルデバイスの場合、常時インターネット接続や長時間の電源スタンバイ状態、そこからのインスタント・オンなどの動作を実現するためには、エネルギー効率に優れたArmアーキテクチャとの相性が良かった。

そしていま求められているのは、クラウドに依存せずにデバイス上で高度なAI処理を行い、低消費電力と高いパフォーマンスを両立させながら、モバイルPCとしてのユーザー体験が高まることだ。マイクロソフトが提案するCopilot+ PCの要件に対し、モバイル向けSoCの分野でArmアーキテクチャによる豊富なノウハウを培ってきたクアルコムが、いち早く応える形となった。

名称にEliteを関するSoCはフラグシップだが、現在は価格が10万円を切る低価格なCopilot+ PC向けにもSnapdragon Xシリーズのラインナップが広く展開されている。2025年の9月下旬に、クアルコムはPC向けの新しい世代のフラッグシップSoCとなる「Snapdragon X2 Elite」と、その上位製品である「Snapdragon X2 Elite Extreme」を発表。Eliteシリーズとしては約2年ぶりの大きなアップデートであり、同社のPC市場に対する本気度を強く印象づける製品が誕生したことで、Copilot+ PCの認知拡大にも結びつきそうだ。

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編集=安井克至

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