「Snapdragon Xシリーズが発表される以前の2021年頃から、クアルコムがArmアーキテクチャを採用したPC向けSoCを投入するかもしれないという噂が業界に広がっていました。私はその頃にはまだ前職に勤務していましたが、ここまで大きなムーブメントになるとは予想していませんでした。巷にはArmアーキテクチャで本当に十分なパフォーマンスが出せるのか、懐疑的な空気もあったと思います。しかし、実際にSnapdragonのSoCを搭載するCopilot+ PCが商品化され、その性能と効率性がユーザーの期待を大きく上回ることがわかると、市場の認識は一気にポジティブな方向へ転じたと感じています」
クアルコムの強みは、モバイル市場で培った技術の蓄積だ。井田氏もまた「Snapdragonが持っていたモバイル向けSoCのテクノロジーをうまくPC向けに最適化したことが差別化につながり、パフォーマンスの部分で既存のアーキテクチャを凌駕できた」と評価する。
井田氏は「PC市場でSnapdragonのブランドイメージをさらに深く浸透させたい」と意気込む。モバイル分野では長年にわたり、特にプレミアムブランドとしてSnapdragonの名を知らしめてきた。この実績が、PC市場での好調なスタートダッシュを呼び込んだともいえる。今後はAI時代のPC市場でSnapdragonのブランドが広がり、モバイルやオートモーティブなど、クアルコムがビジネスを展開するすべての領域で相乗効果を生む可能性がある。
クアルコム本社で全貌が明かされた「Snapdragon X2 Elite」
米国時間の11月11日から2日間、米クアルコムがカリフォルニア州の都市サンディエゴに構える本社に世界各国から記者を集めて、秋に発表したSnapdragon X2 Elite/Elite Extremeの設計を深く紹介するイベント「Architecture Deep Dive 2025」を開催した。
筆者もこのイベントに現地で参加して、新しいSoCのパフォーマンスに触れた。イベントではセミナー形式のセッションに多くの時間を割き、独自開発による第3世代の「Oryon CPU」やAI関連の処理を担う「Hexagon NPU」など、X2 Eliteシリーズを構成する独自コンポーネントの詳細が語られた。初日のセッションの冒頭に登壇した米クアルコムのコンピューティング・ゲーミング部門のSVP&GM、ケンダル・コンダップ氏は、Snapdragon Xシリーズのアーキテクチャが「高性能と低消費電力の両立」という設計思想に基づいており、これからのAI PCの進化にとって土台になり得ることを改めて強調した。


