11月25日発売のForbes JAPAN2026年1月号の特集「日本の起業家ランキング2026」で2位に輝いたのは、hacomonoの蓮田健一だ。
市場シェア6割を超え、ウェルネス施設向けSaaSのカテゴリーキラーとなったhacomono。徹底したこだわりを貫く起業家の「プロダクト愛」がユーザーを魅了する。
「フィンテックをリリースして約1年。すでにSaaSのお客様の半分にフィンテックをご利用いただいている。“確変モード”に入った感触はあります」
ウェルネス施設向けSaaSを2019年に展開して以来、T2D3(3倍、3倍、2倍、2倍、2倍の売り上げ拡大)クラスで成長し、絶好調のhacomono。創業者の蓮田健一は今期の成長を牽引したフィンテック事業をこう評価した。
「hacomono」は、フィットネスクラブなどのウェルネス施設向け会員管理SaaS。従来のシステムは、会員が入会書類に記入し、クラブはそれを手入力して物理カードを発行するなど手間がかかった。
「hacomono」は会員が自分のスマートフォン上で入会や予約などの手続きを完結させられるため、クラブ側は業務負担を軽減できる。導入店舗は1万店を超え、フィットネスでは約6割のシェアをもつ。圧倒的な支持を集める理由を、蓮田は「うちほどやりきれているところはない」と分析する。
「会員管理だけでなく、月謝の支払いや店頭の物販などの決済も『hacomono』でできます。さらに入退館時にQRコードを読み取るハードウェアまでオールインワンで提供している点が強みです」
特に決済機能は、同社から見ても魅力が大きい。SaaSのサブスクモデルはマネタイズに時間がかかるが、決済手数料が収益になるフィンテックは即効性があるうえ、顧客企業のビジネス次第で大きく成長する爆発力を秘めている。
「バーティカルSaaSのユニコーンの多くはフィンテックを組み合わせていて、売り上げの半分がフィンテックという企業も少なくない。当社も数年でフィンテックの売り上げがSaaSに並ぶでしょう」
ただ、フィンテックに魅力があれば競合も力を入れてくる。それでも強気なのは、プロダクトに自信があるからだ。
「とくにUI/UXはこだわっています。導入施設側でいうと、会員のクレジットカード有効期限が切れて月謝の引き落としができなければ、hacomonoが自動で督促してくれて、会員がマイページで修正すると自動で再引き落としされる。これはほんの一例です。いたるところでフリクションレスを実現しているのがイケてるプロダクト」
蓮田がプロダクトにこだわるのは今に始まったことではない。蓮田はもともとエンジニアで、ソフトベンダーのエイトレッドでワークフローシステムを開発。そのときのモチベーションは、「日本の業務系システムはダサい。イケてるものをつくりたい」だった。実際に開発したワークフローソフトは手触り感のあるUIが特徴で、当時国内シェア1位になった。
昔からプロダクト愛は強かったが、経営の視点が加わったのは11年、震災で傾いた家業を継いだときだ。介護事業を立て直すことになったが、経営は素人。資金繰りに困って給与を遅配させ、精神的に追い込まれたこともある。普通ならそこで懲りるところだが、蓮田は違った。



