11月25日発売のForbes JAPAN2026年1月号の特集「日本の起業家ランキング2026」で1位に輝いたのは、アークエッジ・スペースの福代孝良。超小型・軽量の衛星を武器に、宇宙規模のインテグレーターとして飛躍する。
宇宙産業は単価の高いビジネスだ。一般的に、衛星をひとつ打ち上げるだけで100億円単位のお金がかかる。小さなミスが原因で大金が瞬時に塵と化すこともあるのだから、打ち上げのオペレーションは緊張の連続だ。
なかでも衛星関係者の緊張感が最高潮に高まるのは、“ファーストボイス”受信の瞬間である。衛星の設計開発から運用、サービス提供まで手がける宇宙スタートアップ、アークエッジ・スペースを率いる福代孝良は次のように打ち明ける。
「衛星が打ち上げられ、軌道に投入されると、最初のデータを地上に送って通信が確立されます。地上側では受けた波を解析して、自分たちの衛星が発信したものなのか、衛星がどういう状態なのかを確認。この瞬間を、みんな固唾をのんで待っている」
福代がこれまで関わってきた衛星の数は、25年10月時点で14機。つまりアークエッジ・スペースは14機の衛星の運用に成功してファーストボイスを聞いてきたことになる。そのうちの9機が自社開発の衛星だった。
同社が開発・運用するのは超小型衛星だ。「キューブサット」と呼ばれる基幹ユニットは一辺10cm。これを3~6U(ユニット)組み合わせたもので、重量は10~30kg程度と従来の大型衛星の500kg~数トンと比べて格段に軽い。開発期間も短く、大型衛星は5~10年かかるのに対して1~3年程度で済む。
注目はコストだ。超小型衛星は1機が数千万~数億円程度で、単価は大型衛星の100分の1以下にすぎない。衛星は地球のまわりを周回するため、1機だけだと同じ地点からデータ収集する回数が限られるが、低コストの超小型衛星なら星座のように多数配置 (コンステレーション化) しやすく、高頻度にデータ収集することも可能になる。
もちろん低コストといっても、従来の衛星と比較してのこと。単価が高いことに変わりはなく、打ち上げや運用のプレッシャーは軽いものではない。直近では、24年12月に運用開始した、東京大学と共同で開発した「ONGLAISAT」が印象に残っているという。
「センサーで地上を観測するリモートセンシング衛星で、6Uサイズの衛星としては世界最高レベルである2.5~3mの地上分解能をもっています。わが社としても本格的なリモートセンシング衛星の軌道上実証は初めて。この衛星画像を確認したときには心が震えました」
「ONGLAISAT」の画像に感動したのは、技術的に困難な挑戦だったことだけが理由ではない。実は福代に起業家として生きていくことを覚悟させた案件 が「ONGLAISAT」の開発・運用だった。



