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2025.11.25 08:12

宇宙のSIer、超小型衛星で地球と月を繋ぐ:福代孝良

福代孝良|アークエッジ・スペース

こうした経緯で立ち上げたのは18年設立のスペースエッジラボだ。当初は衛星データ活用のプラットフォームを事業にしようとしていた。ITエンジニアを求めて、国を挙げてSTEM教育に力を入れているルワンダに採用活動しに行ったほどだ。しかし、ここでまた思わぬ出会いがあった。「ITエンジニアを採用しに行ったのに、『日本の町工場のようなものづくりをしたい。衛星をつくれないか』と頼まれてしまって。予想外でしたが、世界ではアメリカのプラネット・ラボスのように、衛星を高性能化するではなくコンステレーションでIT的につなげていく流れができ始めていて、それなら可能性があると考えました」

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初受注はルワンダ宇宙庁からの超小型衛星。東京大学と共同で手づくりで衛星をつくって翌19年には軌道投入に成功した。

ここまで運命に流されるようにキャリアを歩んできた福代だが、いよいよ腹を決めるタイミングがやってくる。21年、台湾国家宇宙センターから「ONGLAISAT」の注文が入ったのだ。

「6Uになると開発費は億に届くので、資金も人も本格的に用意する必要があります。そこで東大・中須賀・船瀬・五十里研究室で衛星をつくっていたメンバーと合流して、社名を現在のものに変更。シードラウンドで4億円を調達しました。リードはインキュベイトファンド代表の赤浦徹さん。実は赤浦さんは起業前から評価してくれていましたが、二転三転する私を見て諦めていたとか。このときはじめて『やっとやる気になった』と出資してくれました」

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2030年の売り上げ1000億円へ

衛星のコンステレーション化は世界の宇宙産業で大きな流れになっている。アークエッジ・スペースも潮流に乗って事業を拡大しているところだが、先行する競合らとの違いはどこにあるのか。

「プラネットやイーロン・マスクのスターリンクはモノカルチャーで、同じ衛星を数百~千機規模でつくってコストを下げようとしています。一方、私たちが目指しているのは多品種で30~100機くらいの少量生産。コンポーネントやソフトウェアを標準化すると同時にオープンソースにすることでコストを下げ、多様な用途に対応します」

実際、用途はさまざまだ。25年1月運用開始の6Uシリーズ基本モデルでは、単3電池で動作する地上側発信器から短歌を送って、衛星経由で地上局に送る実証実験をした。インターネットのない場所でも、電池で動くIoT機器で長距離通信できれば、「災害時や漂流や遭難時でも使える」。

25年6月にはハイパースペクトルカメラを搭載したリモートセンシング衛星の運用を開始。多波長センサーで物質固有の周波数スペクトルを分析すれば、森林の樹種や鉱山における植生等の特徴により鉱物の潜在性がわかる。福代が衛星に関心をもつきっかけになった地球観測も、低コスト多頻度でできるようになる。

実は同社は24年6月にブラジルやパラグアイ政府とMOUを締結し、衛星データプラットフォームの提供を始めている。地球観測データとAIを組み合わせて水位や大豆生産などを観測するもので、「これまではレンタルビデオ店に一本ずつ借りに行っていたのを、スマホでネットフリックスを見るくらいに簡単にした」。現在は他社の気象衛星データを活用しているが、そこに先述した樹種などのデータが加われば、「収穫したカカオが適切に管理された森林のものか」とトレーサビリティに活用することも可能だ。

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文=村上 敬 写真=小田駿一 スタイリング=井藤成一 ヘアメイク=yoboon

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