「社会主義の問題点は、いずれ他人のお金を使い尽くしてしまうことだ」 ──マーガレット・サッチャー
1世紀以上にわたり、ニューヨーク市はグローバル資本主義の心臓部となってきた。だからこそ今月、「民主社会主義者」を自称するゾーラン・マムダニが同市の次期市長に選ばれたことは、米国のビジネス界や投資コミュニティーに衝撃を与えた。
現在34歳のマムダニは、この1世紀あまりで最年少のニューヨーク市長になる。また、イスラム教徒がこの職に就くのは史上初だ。マムダニは今年初めにはほぼ無名だったにもかかわらず、アンドルー・クオモ前ニューヨーク州知事らを軽々と破った。クオモは名門政治家一族の出身で、ドナルド・トランプ大統領の支持も得ていた(もっとも、これに関してはむしろクオモに不利にはたらいたと言う人もいるだろう)。
若者票の取り込み
ポピュリズムというと長らく右派のイメージが強かった。米国のトランプ/MAGA(米国を再び偉大に)運動や英国のブレグジット(欧州連合からの離脱)を思い浮かべればいい。
だが現在、別のタイプのポピュリズムが左派から出現しつつあるようだ。家賃の凍結、小規模事業者への支援、最低時給30ドル(約4700円)といったマムダニの急進左派的なメッセージは、明らかに若年労働者層の有権者に響いた。出口調査によると、30歳未満のニューヨーカーのじつに75%がマムダニに投票し、クオモに投票したのはわずか19%だった。
「ミスター・ワンダフル」こと、テレビタレントで投資家のケビン・オレアリーは、マムダニの当選という栄誉(見る人の立場によっては過失)は“全能のアルゴリズム”のなせる業との見方を示している。リンクトインへの投稿で、次期市長について「ソーシャルメディアを熟知していたという点では見事だった」と評している。
まったく同感だ。年配の有権者はミーム(はやりの画像や文章)やTikTokの「バズる」動画に眉をひそめるかもしれないが、人々の関心や注意を引くことが重視される昨今の「アテンションエコノミー」においては、アルゴリズムの重要性が着実に増しており、すべてを左右するものになっている。起業家のイーロン・マスクが2022年10月にツイッターを買収したのもそれが理由だろうし、実際、この計略はトランプの大統領再選にも寄与したというのが筆者の見方だ。



