働き方

2025.11.22 12:00

Z世代に広がる職場の「人の失敗観察」 その背景にある知られざる苦しみ

Shutterstock.com

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職場で何かに失敗した同僚を見ることは、なぜ楽しく感じられるのだろう──? 新たに発表された調査結果によると、働くZ世代の間で、「フェイル・ウォッチング(失敗の観察)」がトレンドになっているという。

これまでもこの若い世代は、表面的なことから即座に下される判断ではなく、より深い意味を持つ判断に基づき、多くの批判を受けてきた。そのZ世代の間に広がる新たなトレンドの背景について、専門家は次のように説明している。

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新たに使われるようになった俗語の意味や用法を説明するオンライン辞書サイト、Urban Dictionary(アーバン・ディクショナリー)によると、「フェイル・ウォッチング」は実際に起きている現象。失敗を期待しながら、「人間観察」と同じように人を観察することだ。また、ドイツ語には「schadenfreude(シャーデンフロイデ)」という言葉がある。他人の不幸を喜ぶこと(いい気味だと思う気持ち)を意味するものだ。

科学者たちは過去の研究から、他人の失敗は、見ている人にとっての自己肯定につながるとしている。なぜそうなるのだろうか?私は以前、「トールポピー症候群」(日本語の「出る杭は打たれる」に類似)に関する記事をフォーブスに投稿しているが、この症候群にみられるのは、例えばあなたが成功すれば、同僚から批判されたり、罰を与えられたり、引きずり下ろされたりするといったことだ。

調査結果によれば、「フェイル・ウォッチング」に関しても、これと同じような状況がみられる。他人の不幸は自らに対する肯定的なイメージや自尊心を持つことにつながり、自分自身に対する不安感を和らげることになるため、楽しく感じられるのだとされている。自分よりうまくやっている同僚が失敗するのを見れば、自分自身を「不十分だ」と思っていた気持ちが軽減されたように感じる人は多いだろう。

あなたも過去に、誰かが課された仕事をこなせなかったり、あなたが考えていたゴールに達しなかったりしたときに、そうした気持ちを持ったことがあるかもしれない。自分が狙っていた昇進をライバルの同僚が逃したとき、それを見て自信を持ったことがあるかもしれない。そしてそのとき、職場での自分の存在感が高まったように感じたかもしれない。

これらは、人間の本質的な性質から起きる反応だ。つまり、恥ずかしく思ったり、罪の意識を持ったりする必要はない。 

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編集=木内涼子

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