ただ、2012年に日本政府の尖閣諸島国有化を巡って中国全土で起きたような反日デモが起きることは考えにくいという。李氏によれば、12年当時はデモ後半期に入ると、毛沢東の肖像画を掲げるデモ隊が登場したという。「毛沢東時代は、こんなに腐敗や格差がなかったと、反日デモのかたちを借りた政府への不満表示だった。当時は反政府デモに発展する兆候もあり、中国政府も慌てていた」と語る。習近平政権の今、中国経済が好調とは言えない。収拾がつかなくなる恐れがあり、中国政府が反日デモを促すことは考えにくいという。昨年、江蘇省蘇州市や広東省深圳市で起きた日本人を狙った襲撃事件の再発にも懸念が深まる。李氏は「外国人に対する殺傷犯罪は、国内外から批判が集まりかねないため、中国政府も再発防止に全力を挙げるはずだ」と話す。
2010年9月に発生した尖閣諸島沖の漁船衝突事件をきっかけに、中国は日本に対してレアアースの輸出を制限した。ただ、中国によるレアアース輸出規制を巡っては、米中両国で規制停止の話し合いがついた直後という状況だ。李氏も「ここで安易にレアアースを持ち出すと、話が日中だけにとどまず、他の国に対してもネガティブなメッセージになる恐れがある」と述べ、中国側が踏み切る可能性は高くないとの見方を示した。
米政府元当局者は「日本政府はこれ以上、中国を刺激しない方が良いが、同時に高市首相の答弁も撤回しない方が良い。中国は既成事実を作ると、そこにつけ込んでどんどん前に出てくる」と語る。日本政府が答弁撤回を拒むと同時に日中対話を促しているのは正しいやり方というわけだ。
米政府の元当局者は「中国がナンシー・ペロシ下院議長(当時)の台湾訪問に激怒したのは、ペロシが政界の実力者だったから。高市氏もそれなりに強い政治家だと認められたという見方もできる」と語る。永田町では「日中関係が荒れている今こそ、高市首相が靖国神社に参拝するチャンス」という声も漏れる。李氏は「中国は安倍晋三首相にも反発していたが、長期政権になるにつれ、付き合うしかないと考えを変えた。今は高市政権がどの程度続くかを見極めているところだろう」と語った。


