健全なカップルにとって、境界線は常に2人の間に存在しており、柔軟性があり、自分で設定したものだ。つまり、境界線はパートナーに行動を変えるよう要求するためのものではなく、境界線を超えた場合に自分がどう出るかを理解してもらうためのものだ。どんなに健全なカップルでも、それを口に出さなければ関係はうまくいかなくなるからだ。
最も重要な違いは、境界線は最後通牒でもなければ、他人をコントロールするための譲れない一線でもないということだ。境界線は自己認識と自尊心の表現であり、あなたが恋愛関係において可能な限り安全で愛されていると感じるためのガイドラインを形成する。
ルールとは
一方、ルールとは、ある人が他の人に持つ期待であり、主な特徴は他の人の行動を形成したりコントロールしたりする意図で設定されることにある。このようなルールは、私たちが子どもの頃に親から与えられた 「◯◯をしたら外出禁止」といったルールと同じ類いのものであることが多い。ただ、大人になってからの恋愛関係においては、以下のようなものになるかもしれない。
・「私抜きで飲みに行ってはダメ」
・「外出しているときは、1時間おきにテキストを送ること」
境界線は自分のことを考えてのもので、個人的な行動を通じて効力を持つが、ルールはその逆だ。具体的には、注意は外部に向かっており、圧力や説得、罰でもって強制する。これはまた、本質的にルールは厳格で一方的であり、協力ではなく遵守するものであることを意味する。
これは、すべてのルールが本質的に悪く、制約を設けるものだと言っているわけではない。恋愛関係における相互協定（一夫一婦制や金銭的な透明性など）は絶対に健全なものになり得るものもある。だが、そこでのキーワードは相互だ。 2人が共同で作成したルールは協約となる。一方がパートナーに押し付けるルールは、単なるパワープレイだ。
混同が問題になる理由
専門誌『Journal of Emotional Abuse』に掲載された研究で説明されているように、境界線はあらゆる人間関係において不可欠だ。境界線がないと、個人のユニークな心理的特徴が失われる「境界の溶解」の犠牲者になるリスクがある。
これは、感情的に、あるいは精神的に自分と他人の境目がわからなくなることで起こる。その結果、人間関係における役割分担が混乱することになる。家族関係では、行動的にも感情的にも誰が親で誰が子どもなのかがはっきりしないようなものになるかもしれない。
しかし恋愛関係においては通常、極端になりがちだ。一方では、パートナーが不健全な方法で互いの感情や責任を引き受けるようになる「エンメッシュメント」につながることがある。もう一方では、カップルのどちらかが関係を支配したりコントロールしたりし、相手は従順になったり依存したりするという力の不均衡につながる可能性がある。
