ヘルスケア

2025.11.18 10:00

インフルエンザ大流行、厳しい冬となる恐れ 新変異株「K亜系統」への対策は

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「K亜系統」で流行悪化の恐れ

前述した通り、北半球ではすでに各地でインフルエンザ患者が急増している。日本の報道によれば、同国内の患者数は前年同期比で6倍に増え、休校や学級閉鎖などの措置をとる学校や幼稚園が相次いでいる。

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英国の公衆衛生・医療を担う国民保健サービス(NHS)の最高責任者サー・ジム・マッキーは、英医療系シンクタンクのキングス・ファンドの年次総会で「NHSは、厳しい冬を迎えようとしている。インフルエンザ患者数は昨年同期の3倍増となっており、患者が受けるべき医療水準を満たすのはいっそう困難になるだろう」と述べた。インフルエンザ患者がさらに増加すれば診療所や救急治療室、病院がひっ迫し、他の疾患の治療の妨げとなりかねない。

カナダでも患者数が増えており、カナダ政府はウェブサイトで「インフルエンザの活動性の指標はまだ比較的低いが、ここ数週間で増加している」と警鐘を鳴らしている。今のところカナダで流行している主流株はA(H1N1)型だ。しかしインフルエンザは、マーベルのスーパーヒーロー映画に新たな敵が次々と出現するように、流行中に優勢な株が置き換わっていくことがある。

「K亜系統」の十分な情報提供、CDCにできるのか

政府のウェブサイトといえば、米国では先週まで史上最長となる連邦政府機関の閉鎖が続いていたため、国民はインフルエンザ流行の現状を知ることができなかった。43日間に及ぶ閉鎖期間中、米疾病対策センター(CDC)は公式サイトをほとんど更新しなかった。閉鎖が終了した今、少なくともつなぎ予算案の期限が切れる2026年1月30日までは一部のウェブサイトは更新される可能性が出てきた。

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しかし、である。CDCに関しては、より長期的な懸念がある。

ドナルド・トランプ政権は発足以来、イーロン・マスクが当初率いた政府効率化省(DOGE)を通じてCDCや保健福祉省(HHS)の人員を削減し、保健・科学分野の連邦予算をありとあらゆる方向から削ってきた。これら一連の方針が、インフルエンザの流行を監視し情報提供を行うCDCの能力にどのように影響するかは、まだ答えが出ていない。直近10年間の米国のインフルエンザ関連死者数は、1シーズンあたり約6300人から多い年には5万2000人を超える。国民に明確に説明できる計画すらないままCDCとHHSを解体してしまえば、インフルエンザによる今年の死亡者数はさらに増えるのではないだろうか。

米国は昨年、2009年の新型インフルエンザA(H1N1)型のパンデミック(世界的大流行)以来最悪の流行に見舞われたばかりだ。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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