2025.11.25 16:15

フェラーリ初の完全EV「エレットリカ」発表──想像をかき立てる、巧みなストーリーテリング

テクノロジー&イノベーション・ワークショップと題するエレットリカの発表会にはメディア関係者だけでなく機関投資家も参加した。

テクノロジー&イノベーション・ワークショップと題するエレットリカの発表会にはメディア関係者だけでなく機関投資家も参加した。

アンヴェイルされたのは、無機質なシャシーだった。しかし、次々に構成要素を見ていくうちに映画のティザーのように興奮を感じたのも事実。その戦略をジャーナリスト大谷達也が紐解く。


フェラーリ初のピュアEVとなるエレットリカ。彼らはその概要を3段階に分けて発表する計画だ。2025年10月にイタリア・マラネッロのフェラーリ本社で行われた、その発表の第1回となる「テクノロジー&イノベーション・ワークショップ」の冒頭で、CEOのベネデット・ヴィーニャはフェラーリがEVをリリースする意義を次のように説明した。

「フェラーリはさまざまなテクノロジーの可能性を信じる企業です。そして一つひとつのテクノロジーを極めるとともに、それらを活用し、お客様にスリリングなドライビング体験を提供したいと願っています。私たちはEVでもこれが可能だと信じています。これがエレットリカを開発する第1の理由であり、第2の理由は、お客様に提供するテクノロジーはできるだけ間口を広げておきたいというものです。これを実現するため、私たちは今後もエンジン車やハイブリッド車をつくり続けていきます」

フェラーリがEVをつくる理由は、これだけではない。自動車に課せられる将来的な排ガス規制に対応するため、もしくは上場企業としての社会的な責任を果たすこともエレットリカの開発に着手した理由であったはず。ただし、それらを言い訳として用いることなく、あくまでも顧客第一主義からEVの製品化に踏み切ったとする論の進め方は、いかにもフェラーリらしいものである。

もうひとつ興味深い論点は、ヴィーニャCEOが長年、半導体業界に身を置いていた経営者であること。そんな経歴をもつ彼にとってEVが身近な存在だったことも、エレットリカを開発するきっかけになった可能性がある。冒頭で述べた通り、フェラーリはエレットリカを3段階に分けて発表する計画を立てている。その第1回にあたる今回は、エレットリカで用いられる主要コンポーネントを展示し、その技術的背景を説明するという内容だった。

もはやEVが目新しい存在でなくなった以上、そのコンポーネントだけ見せられても大した意味はないように思える。しかし、エレットリカはフェラーリ独自のコンセプトに基づいて開発されており、そこで用いられるコンポーネントも自社開発品が少なくないため、それらを見るだけでも極めて興味深く感じられた。

公開されたエレットリカのプラットフォーム。バッテリー容量は122kWhと大きく、530km以上の航続距離を実現する。
公開されたエレットリカのプラットフォーム。バッテリー容量は122kWhと大きく、530km以上の航続距離を実現する。
次ページ > 4輪を4基のモーターで個別に駆動

text by Tatsuya Otani | edited by Tsuzumi Aoyama

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事