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2025.11.18 16:00

米ディズニーの人気俳優のAIアプリが「故人のアバター」を生成、SNSで反発

ケイラム・ワージー(Photo by Kevin Winter/Getty Images)

非人道的なテクノロジーだとする批判がSNS上で支持を集める

ワージーの投稿の「いいね」の件数は14日時点で6000件を超えた程度だが、X上ではこのようなテクノロジーが非人道的だと批判する声のほうが、はるかに多くの支持を集めている。「このアプリは客観的に見ても、“想像しうる中で最も邪悪な発想の1つだ”」と書いたユーザーの投稿は21万件の「いいね」を集めた。「元ディズニー・チャンネルのスターが、人生で見た中で最も邪悪なものを作るとは思わなかった」という投稿にも13万9000件の支持が集まった。

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別のユーザーは、このアプリを「悪魔的で、不誠実で、人間性を奪うものだ」と批判して1万2000件の「いいね」を獲得した。さらにそのユーザーは、「AIが自分の人格を再現することを絶対に望まない」と明言し、「自分の価値は自分が死んだら消える。私はアバターなんかじゃない」とも語っていた。

また、他のユーザーからは、無料でダウンロード可能なこのアプリが、「プレミアムアバター」や有料アイテムの販売を通じて「人々の悲しみにつけ込んで利益を得ている」との批判や、「悲しみに向き合う健康的な方法とは言い難いのではないか」という懸念も寄せられている。

SFドラマ『ブラック・ミラー』の特定エピソードを思わせるとの声も

一部のSNSユーザーは、2waiのテクノロジーがSFドラマ『ブラック・ミラー』の特定のエピソードを思わせると指摘している。このドラマは、テクノロジーが暴走した未来社会を描き、そのディストピア的側面をテーマとしている。「このアプリは、ブラック・ミラーのエピソードにそっくりだ。特にシーズン2の第1話とまったく同じだ」と書いたユーザーの投稿は、2万8000件の「いいね」を集めた。

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このユーザーが言及した『ずっと側にいて(Be Right Back)』と題したエピソードでは、自動車事故で恋人を亡くした女性が、その恋人の人格をAIで再現するストーリーが描かれる。あるユーザーは、この物語が「本当に悲劇的だった」と評し、「あのエピソードを“未来のやり方を示す手本”みたいに扱うべきではない」と主張した。

アマゾンも故人の声を模倣できる機能を過去に発表

他のAIテクノロジーも、このエピソードに関連して語られてきた。たとえば、アマゾンが2022年に発表したAlexa向けの新機能は、亡くなった親族の声を模倣できるものだった。その当時、同社のバイスプレジデントでAlexa部門の主任科学者だったロヒト・プラサドは、「AIは喪失の痛みそのものを消し去ることはできないが、思い出を長く残す助けにはなる」と語っていた。

約7億7500万円をシード調達、映画プロデューサーがワージーと共同創業

2waiは、俳優のワージーと映画プロデューサーのラッセル・ガイザーが共同創業したアプリで、ガイザーがCEOを務めている。今夏にiOS向けのベータ版が公開されたこのアプリは、ユーザーとリアルタイムで会話をすることが可能で、「自然な動きと発話と同期した口の動き」を備えた「ホロアバター」と呼ばれるキャラクターをユーザーが作成可能とされる。

2waiには、公開時点でワージー本人を再現したものや、ウィリアム・シェイクスピアのAIアバターなどのあらかじめ生成されたキャラクターが用意されており、ユーザーはそれらと会話できた。

同社によれば、ユーザーは自分自身のアバターを「デジタルツイン」として生成できるほか、友人や家族に似せたアバターを作成することも可能だ。ワージーはこのアプリを、「俳優やクリエイターが自分の肖像権を管理するための手段」に位置づけており、6月のVariety誌の取材で、「クリエイターや個人が自分自身の権利を持つことが急務だと感じていた」と語っていた。また、AIアバターは「本人の声を奪うのではなく、増幅させるために使える」とも述べていた。

2waiは、6月時点で500万ドル(約7億7500万円。1ドル=155円換算)のシード資金を調達し、ブリティッシュ・テレコムやIBM、グローブ・テレコムと協業していると発表していた。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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