北米

2025.11.19 13:00

米国防総省、敵国をハッキングする「AIエージェント」に巨額予算投入

Shutterstock.com

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米政府は現在、外国の敵対勢力に対する自動ハッキングを大規模に実行する人工知能(AI)エージェントの開発に取り組む秘密主義のスタートアップ、「Twenty(トゥエンティ)」と契約を結んでいる。

AIエージェントでサイバー戦を自動化、Twentyと約19億5000万円で契約

米政府は、AIエージェントのサイバー戦争利用に向けた投資を静かに進めており、2025年は積極的に攻撃を仕掛けるサイバー作戦向けのAIツールを開発する秘密主義のスタートアップに数百万ドル(数億円)を投じている。

連邦契約の記録によると、バージニア州アーリントンに拠点を置くTwentyは今夏、米サイバー軍と最大1260万ドル(約19億5000万円。1ドル=155円換算)規模の契約を締結した。同社は、海軍からも24万ドル(約3720万円)の研究契約を獲得している。Twentyには、米中央情報局(CIA)が設立した非営利のベンチャーキャピタル(VC)である「In-Q-Tel(イン・キュー・テル)のほか、カフェイネイテド・キャピタル、ゼネラル・カタリストが出資している。Twentyはコメント要請に応じなかった。

Twentyのような、VCの支援を受ける攻撃的AIサイバー企業が米サイバー軍と契約を結ぶのは珍しい。通常、この種の契約は、小規模でニッチな専門業者か、ブーズ、アレン・ハミルトン、L3ハリスのような伝統的な防衛大手と結ばれる場合が多い。

AIエージェントで攻撃を「自動化」、数百の標的を同時に狙うTwentyの技術

Twentyはまだ、公に立ち上げを宣言していないが、ウェブサイト上では「数週間のマニュアル作業を要していたワークフローを、数百のターゲットにまたがる自動かつ継続的なオペレーションへと変える」と説明している。同社は「米国とその同盟国がサイバー紛争に関与する方法を根本から変える」と主張している。

また、求人広告からその実体が見えてくる。ある求人で同社は、攻撃経路の構築フレームワークやAI駆動の自動化ツールなど、「高度な攻撃的サイバー能力」の開発を担当する「攻撃的サイバー研究部門のディレクター」を求めていると記している。AIエンジニアの求人では、複数の自律型AIエージェントを連携させるためのオープンソースソフトウェア「CrewAI」などを活用すると明示している。

アナリスト職の求人には、同社が「ペルソナ開発」に取り組むことが記されている。政府系のサイバー攻撃では、敵対勢力のコミュニティやネットワークに潜入するために、「巧妙な偽アカウント」を使ったソーシャルエンジニアリングがよく用いられている(フォーブスは過去にも、AIでこのようなアバターを作成する警察向け業者について報じていた)。

Twentyの背景──経営陣は元米軍と情報機関の幹部

Twentyの幹部には、軍や情報機関の出身者が並んでいる。同社のサイトによれば、共同創業者兼CEOのジョー・リンは、米海軍予備役の元士官で、サイバー大手パロアルトネットワークスでプロダクト管理部門の副社長を務めていた。彼は、以前に在籍していたサイバーセキュリティ企業エクスパンスで、国家安全保障関連の顧客に対して、自社ネットワークの脆弱性を特定する支援を行っており、パロアルトネットワークスによる同社の買収を経て合流していた。

また、最高技術責任者(CTO)のレオ・オルソンも、エクスパンスで国家安全保障チームに所属していた経歴をもち、米陸軍では信号諜報(SIGINT)担当の士官だった。エンジニアリング部門の副社長を務めるスカイラー・オンケンは、米サイバー軍と米陸軍で10年以上にわたり勤務した経験をもつ。、政府渉外責任者のアダム・ハワードは、長年にわたり議会スタッフとして働き、直近ではトランプ政権の発足に向けた国家安全保障会議(NSC)の移行チームに参加していた。

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翻訳=上田裕資

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