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2025.11.20 12:00

「バイブコーディング」とは何か、それは一夜にして大金を稼げるのか?

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Collins Dictionary(コリンズ英語辞典)は、「バイブコーディング」(vibe coding)を今年の「Word of the Year」(今年の言葉)に選出した。これは、(非)技術系のファウンダーがデジタル製品を作る方法に起きた地殻変動を捉えた言葉だ。長年のプログラミング教育は忘れてよい。いまや、欲しいものをAIに説明すれば、人工知能(AI)がコードを書いてくれる。

この語を作ったのは、テスラの元AIディレクターでOpenAIの創業エンジニアの1人であるアンドレイ・カルパシーだ。彼によればバイブコーディングとは、AIを通じて「自然言語を用いてコンピュータコードの記述を支援する」ことを意味する。カルパシーが言うように、「今いちばん熱い新しいプログラミング言語は英語」なのだ。

週次の食事を計画するアプリや顧客注文を追跡するアプリが欲しいとAIに伝える。AIがコードを生成する。あなたはそれをテストし、指示を調整し、動くまで反復する。構文の丸暗記は不要。判読不能なエラーメッセージのデバッグも不要。必要なのは会話と反復だ。

起業家はこの技術に飛びついている。スウェーデンのAIスタートアップであるLovable(ラヴァブル)は、ヴァイブコーディングの波に乗り、7月にユニコーン評価に到達した。昨年は一行もコードを書けなかったファウンダーが、今日ではSaaSプロダクトを立ち上げている。だが、仕事を辞めて一夜にして大金を稼げると期待する前に、相手にしているものの正体を理解すべきだ。

バイブコーディング:高速で作るときの留意点

あなたのMVPは負荷に耐えられないかもしれない

作業用プロトタイプに到達するまで、今では数か月ではなく数時間で済む。今日、機能する何かをローンチできる。ほとんど初期投資なしで事業を始められる。しかし、10人のユーザーで動くアプリと1万人を処理するアプリの間には巨大な差がある。バイブコーディングで作ったMVP(最小限の機能を提供するプロダクト)は、コンセプトを示し、需要を検証できる。しかし、実際のトラフィックが来たときに優雅にスケールする可能性は低い。

プロの開発者は、データベース最適化、サーバーアーキテクチャ、セキュリティプロトコルを理解している。バイブコーディングはこれらの基盤を無視しがちである。ユーザーベースが爆発的に増え、アプリがクラッシュし始めたとき、インフラを正しく作り直すには本物のエンジニアリングの専門知識が必要になる。

アイデアを素早く試すためにバイブコーディングを使おう。牽引力が証明できたら、きちんとした開発に予算を割こう。MVPまでのスピードは革命的だ。だがMVPからエンタープライズ級への道のりには、伝統的な専門性が必要となる。

バイブコーディングではプロダクトマーケットフィットは得られない

参入障壁は消えた。開発者に5万ドル(約773万円)を用意する必要も、最初のバージョンを作るのに6カ月費やす必要もない。週末でプロダクトを作り、月曜日にローンチし、金曜日までに顧客からフィードバックを得よ。このスピードは検証のすべてを変える。失敗した実験にかかるのは年単位ではなく日単位だ。ピボットは、実際のユーザー行動に基づきリアルタイムで起きる。

しかし、容易であることは自動的であることを意味しない。顧客を見つけ、サービスを磨き、持続可能なビジネスモデルを構築する必要は残る。バイブコーディングが扱うのは技術的な作成部分だけだ。それ以外のすべてはあなたの責任なのだ。

AIがプロダクトマーケットフィットの問題を解決したり、販売方法を教えたりすると思ってはならない。AIが取り除くのは多くの障害のうちの1つに過ぎない。ビジネスの基本は不変である。顧客が自分たちの提供する「問題解決」に対価を払う必要があるのは変わらない。

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翻訳=酒匂寛

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