スケールの機会を見つけよ
受けられるクライアントの数には限界があり、チームが提供できる時間にも限りがある。サービスビジネスには自然な上限がある。だが、自分の専門知を、クライアントが独立して使えるプロダクトに梱包したらどうだろうか。長年の顧客インサイトを蓄積してきた組織には、ここに黄金の機会がある。深い市場知識が競争優位性となるのだ。
クライアントが繰り返し求めていることに耳を傾けよう。どの案件でも顔を出す問題に目を凝らそう。そうした特定の課題を解決するテックソリューションを、バイブコーディングを使って構築せよ。たとえば、マーケティングエージェンシーならSNSカレンダーを生成するAIツール、デザインスタジオならブランドの一貫性チェッカー、SEOコンサルティングなら自動監査ソフトウェアを作れる。
人間の専門性を、あなたが眠っている間も働くプロダクトに変えよ。既存のクライアント基盤がベータテスターと最初の顧客になる。
プロダクトは一夜でコモディティ化する
プロダクトデザイナーのマット・ボイルは警告する。「ひどいものを出荷するのが、これまでになく簡単になった」。誰もがプロダクトを作れるようになると、そのプロダクト自体は特別ではなくなる。あなたのアプリの機能では差別化できない。明日には、あなたと同じAIツールを使って誰かがそれをクローンするだろう。
Zero100のケリー・クチーニョはこう指摘する。「誰もがシステムと対話できるようになると、障壁が下がり、開始コストがゼロに近づき、創造性が跳ね上がる」ことは知られている。しかし彼女はまた、重要な要件に言及する。「バイブコーディングで誰でも作れる時代だからこそ、『どう作るか』ではなく『どれだけうまく実行し、本物のビジネス価値を生み出せるか』で勝負が決まるのです」という。
あなたの個人ブランドがすべてになる。コミュニティ作りは、機能作りよりも重要になる。クライアントを獲得する能力は、コードのリポジトリではなく、関係性に依存する。流通と信頼が真の競争優位になる。テクノロジーはビジネスを可能にするだけだ。ビジネスそのものにはまったく別の強みが要る。
結果を期待する前にまずスキルを身に付けよ
バイブコーディングとは、「ChatGPTに『金持ちにして』と打ち込む」ことではない。プロンプトの組み立て方、出力のデバッグの仕方、AIを機能的な解決に導く方法を理解する必要がある。これらのスキルは、コース、チュートリアル、コミュニティで学べる。見返りを期待する前に学習に投資せよ。優れたバイブコーダーは、プログラマーではなくプロダクトマネージャーのように考える。
ビジネス向け人工知能の講師であるマーク・ジェームズは懸念を表明する。「時間の経過とともに人々がメカニズムから切り離されていくと、わたしはその品質と理解に不安を覚えます」。AIが重労働を担うとしても、問題を見抜き、改良を指示し、顧客に提供できる水準に本当に達したかどうかを判断するのに十分な理解は必要だ。
AIがゴミを生成したときにそれを見抜く術を身に付けよ。必要になったときに本物の開発者と効果的に意思疎通できるよう、コード構造について十分に理解せよ。最も成功するバイブコーダーは、自らのツールの可能性と限界の両方を理解している。
バイブコーディング:制約なく試せ、ただし商業性を意識せよ
バイブコーディングは創造を民主化する。何十年も既存プレーヤーを保護してきた障壁は消えた。あらゆる起業家が一夜にして技術的に有能になる。しかし、作ることが容易になった分、注目、信頼、顧客ロイヤルティをめぐる競争は激化する。誰もが作れるようになったとき、勝敗を分けるのは別の要素である。
プロダクトを素早く作れ。すべてをテストせよ。うまくいくものをスケールさせよ。しかし、持続的な成功は、現実の人々の現実の問題をあなたが解決し、実行できると信頼してもらうことから生まれる。コードは無料かもしれないが、顧客の信頼を得るコストは依然として大きい。バイブコーディングが扱うのは「どのように」(how)の部分だ。しかし「なぜ」(why)と「誰に」(who)を決めるのはあなたの責任なのだ。


