北米

2025.11.18 12:30

「アラブの盟主」皇太子訪米で注目、トランプ家とサウジの「金脈」の歴史を探る

2025年5月14日 、中東訪問を行うトランプ大統領。(Photo by Win McNamee/Getty Images)

クシュナーとトランプのビジネスがPIFとLIVゴルフを通じて広がる

2021年
政権を離れたトランプの娘婿ジャレッド・クシュナーは、「アフィニティ・パートナーズ」と呼ばれるプライベートエクイティ会社を立ち上げた。米上院財政委員会の元委員長ロン・ワイデンの書簡によれば、クシュナーは2024年までにサウジ政府系の公共投資基金(PIF)から20億ドル(約3100億円)の出資コミットメントを取り付けた。コミット期間は2026年8月までで、管理報酬は1.25%。つまりサウジ側は5年間で少なくとも1億2500万ドル(約194億円)をクシュナーの会社に支払うことになり、クシュナーの個人資産は10億ドル(約1550億円)超へと押し上げられた。クシュナーの広報担当者はコメント要請に応じなかった。

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2022年7月
サウジが支援するLIVゴルフは、PGAツアーに対抗するリーグを作るべく、石油マネーを惜しみなくスター選手に投入した。そのツアーがニュージャージー州ベドミンスターのトランプ・ナショナル・ゴルフクラブを訪れた。フォーブスが入手した書類によれば、この大会を主催したトランプのクラブは約80万ドル(約1億2400万円)を得ていた。

「トランプ」ブランドとサウジ資本が不動産案件で結合

2022年11月19日
トランプ・オーガニゼーションは、海外での新たなライセンス契約としては数年ぶりとなる取引を発表し、サウジのデベロッパー、ダー・アル・アルカーンがオマーンで手がけるプロジェクトに「トランプ」ブランドを付与することに合意した。この契約により、サウジ企業からドナルド・トランプに600万ドル(約9億3000万円)超が支払われた。

2024年7月1日
ダー・アル・アルカーンは、母国サウジアラビアでトランプとの契約を追加し、ダー・グローバルという子会社を通じて「トランプ・タワー・ジェッダ」を発表した。これを受けサウジ国内でのトランプ案件に紐づく資金を受け取るとみられるDTマークス・KSA LLCは、1590万ドル(約25億円)のライセンス料を計上した。ダー・アル・アルカーンの担当者はコメント要請に応じなかった。

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2024年12月9日
トランプが2度目の大統領選で勝利した1カ月後、ダー・グローバルはリヤドで2件のトランプ案件を発表した。サウジ企業幹部は「これら開発は、サウジアラビアの首都におけるラグジュアリー住宅の概念を塗り替える」と誇らしげに語った。

2025年4月3日
大統領の関税計画に世界の金融市場が揺れる中、トランプはマイアミへ向かい、自身が所有するトランプ・ナショナル・ドラルのゴルフリゾートで開催される、サウジ支援のLIVゴルフのイベントに先立つディナーに出席した。

2025年5月13日
トランプは大統領任期の序盤としては2度目となるリヤド訪問を行い、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールを巡る3カ国歴訪を開始した。これらの国はいずれも、トランプ・オーガニゼーションがサウジのダー・アル・アルカーンと不動産案件で積極的に動いている国だ。

EA買収とガザ和平交渉を仲介、クシュナーのビジネスと政治の関係

2025年9月29日
ダー・グローバルはジェッダで2件目となるトランプの物件「トランプ・プラザ・ジェッダ」を発表した。この物件は、オフィスやアパートメント、セントラルパークを参考にした緑地を備える計画だ。

2025年9月29日
クシュナーのアフィニティ・パートナーズは、サウジアラビアの政府系ファンドと組み、ゲーム大手エレクトロニック・アーツを550億ドル(約8.5兆円)で買収することで合意した。その1カ月足らず後にクシュナーは、アラブ諸国の指導者と共にガザでの和平交渉を進めていた。「世間が『利益相反』と呼ぶものを、米国大使のスティーブ(ウィトコフ)と私は、世界中で築いてきた“経験と信頼関係”と呼んでいる」と、クシュナーは『60ミニッツ』で語った。

投資サミット登場で存在感を高めるトランプ・ジュニア

2025年10月29日
大統領の長男、トランプ・ジュニアが初めてサウジアラビアを訪れ、ウォール街の大物が一堂に会する投資サミットに出席した。会場にはブラックストーンのスティーブン・シュワルツマン、カーライルのデービッド・ルーベンスタイン、ブリッジウォーターのレイ・ダリオ、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンなどが顔をそろえた。

また、トランプ・ジュニアがパートナーを務める投資会社、1789キャピタルを率いるプライベートエクイティ投資家のオミード・マリクも参加していた。ステージに立ったトランプ・ジュニアはこう語った。「20年前の時点で、ヨーロッパではなく中東に投資しようと考える“まともな神経の持ち主”がいるなんて、誰が思っただろう? この地域に広がるビジネスチャンスは本当に素晴らしい」。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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