人工知能（AI）を用いてアプリやウェブサイトを自動生成するサービスを提供するスタートアップ、Lovable（ラバブル）が、前回調達からわずか4カ月間で評価額を3倍に上昇させ新たな資金調達の交渉を進めている。
Lovable、評価額約9240億円で資金調達を協議中
4人の関係者によれば、ストックホルム拠点のLovableは現在、評価額60億ドル（約9240億円。1ドル＝154円換算）前後での調達を協議中という。ただし、交渉は流動的で、金額が変動する可能性もあるという。自然言語による指示のみでソフトウェア開発を行う、「バイブコーディング」のスタートアップとして知られるLovableは、コメント要請に応じなかった。
同社は、前回7月のシリーズAラウンドにおいて、2億ドル（約308億円）を調達し、評価額を18億ドル（約2772億円）に引き上げていた。主導したベンチャーキャピタル（VC）は、アクセルだ。今回の新たな調達が成立すれば同社の評価額は、その3倍以上に跳ね上がることになる。バイブコーディング分野の代表的な一社であるLovableは、プログラミングの知識を持たない一般ユーザーであっても、AIモデルからの提案を受けながら、アプリやウェブサイトを構築できるサービスを提供している。
設立8カ月で、年換算売上約154億円を達成
2024年11月に設立されたLovableは、そのわずか8カ月後の6月に、年換算売上1億ドル（約154億円）を達成し、史上最速で成長したソフトウェア企業となっていた。同社の成長スピードは、同様な急成長を遂げたクラウドセキュリティ企業Wiz（ウィズ）やサンフランシスコ拠点の人事ソフトウェア企業Deel（ディール）を上回る。この2社は、それぞれ18カ月と約2年で年換算売上1億ドル（約154億円）を達成していた。
競合のCursorも評価額約4.5兆円で約3542億円を調達
Lovableの創業者アントン・オシカは先日、7月に230万人だったアクティブユーザー数が、現在800万人に近づいていると明かした。投資家はバイブコーディング分野への投資を強化しており、プロ向け色の強いコーディングツールCursor（カーソル）も11月13日、評価額293億ドル（約4.5兆円）で23億ドル（約3542億円）を調達した。サンフランシスコ拠点の同社は、1月にアンドリーセン・ホロウィッツとスライブ・キャピタルの主導で1億ドル（約154億円）を調達した際に25億ドル（約3850億円）と評価されていた。
Cursorの共同創業者4人は、ビリオネア入りを果たしたが、同社はそれと同時に年換算売上が10億ドル（約1540億円）を超えたと発表していた。同社は、収益規模と評価額の両面でバイブコーディング領域で最大の企業となったが、LovableやReplit（リプリット）、Bolt（ボルト）、Cognition（コグニション）などの競合もそれに続いている。
OpenAIやグーグルなど、AI提供企業との競争も激化
Lovableを含むこれら企業群は、Anthropic（アンソロピック）やOpenAIなどのAIモデルを活用してコードを生成している。しかし2025年に入り、AIモデルの提供企業自身がコーディングツールをリリースしたことで、スタートアップ側は新たな競争にさらされている。
7月には、グーグルが別のバイブコーディングツールWindsurf（ウインドサーフ）の創業者を24億ドル（約3696億円）で引き抜いた。OpenAIは、Windsurfの買収を試みたが、交渉は決裂した。その後、同社の残された事業はCognitionに買収された。
