宇宙

2025.11.18 14:30

生物進化「カンブリア爆発」、地球の公転軌道の離心率変化が拍車をかけた可能性

カンブリア紀以降に生息した海洋生物化石のイラスト。腕足動物、三葉虫、アンモナイト、二枚貝、十脚類などの分類群の生物が描かれている(Mesa Shumacher/Santa Fe Institute)

カンブリア紀以降に生息した海洋生物化石のイラスト。腕足動物、三葉虫、アンモナイト、二枚貝、十脚類などの分類群の生物が描かれている(Mesa Shumacher/Santa Fe Institute)

地球の生物の多様性が急激に増大した現象「カンブリア爆発」が起きたのは、太陽を公転する地球の軌道の離心率が誘因となった可能性が高いとする最新の研究論文が、米国地球物理学連合(AGU)の学会誌Geophysical Research Lettersに掲載された。

黄色矮星の太陽を地球はほぼ円形に近い、予測可能な軌道を描いて公転しているが、数万~数百万年という時間スケールでは完全に予測可能というわけではない。実際に、地球の軌道は変化し、いわゆる軌道離心率が大きく(わずかに楕円形に)なる可能性がある。



その結果として約5億4000万年前、海洋と大気に含まれる酸素の量が急増し、生物の急速な多様化であるカンブリア爆発を後押しした可能性があると、AGUは説明している。

今回の研究では史上初めて、地球の「軌道強制力」とカンブリア爆発期の進化における種分化と多様化とを定量的に関係づけることに成功したと、論文で報告されている。

軌道強制力

今回の論文では、長期にわたる「軌道強制力」が、カンブリア爆発期に観察される断続的な酸素濃度上昇と生物の放散現象を引き起こしたとする説を提唱している。

論文の第2執筆者で、英リーズ大学の生物地球化学者のベンジャミン・ミルズは、取材に応じた電子メールで、軌道強制力は地球の公転軌道の変化が地球の気候を変動させる作用だと説明している。

研究チームの主張によれば、地球の長周期の軌道サイクルによって引き起こされる気候変動が、地球の地表の風化作用に影響して栄養物を断続的に放出すると、栄養物が海に流入して光合成を爆発的に増加させ、副生成物としての酸素の放出につながった可能性があると、AGUは述べている。

最新モデル

研究チームは、地球の気候と地表の化学的性質の数百万年にわたる変化を算定するために、新たに開発した地球進化モデルを使用した。

ミルズによると、モデルを実行すると、軌道変化の規模の変動とモデルの海洋化学の低速な応答時間によって駆動されるシグナルが数百万年にわたって現れることに、研究チームは気がついた。

この変化は、地質記録で確認されている傾向と一致したという。変化が起きたのは温室気候条件下で、当時の地球の大気中酸素濃度は現在の水準の約10~50%にまで上昇していたと、論文に記されている。

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翻訳=河原稔

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