素材変更とキャッシュレス化で、ペニーが高コストな負担に変わる
2010年から2025年に鋳造された最後のペニーまでは、「ユニオン・シールド」テーマのデザインが採用され、表面にはリンカーン、裏面には盾が刻まれた。銅の含有量も減り、現代のペニーは97.5%が亜鉛、外側の2.5%が銅メッキという構造になっていた。
しかし、ペニーの素材に使う銅を減らしても、採算が合わないものになっていた。金属価格の上昇などが重なり、造幣局は1枚つくるたびに赤字を出す状況で、1セント(約2円。1ドル=155円換算)硬貨1枚あたり約3.69セント(約6円)のコストがかかっていた。
同時に、小銭そのものの需要も落ち込んだ。米国人が、買い物の支払いで硬貨を取り出すことはほとんどなくなり、スワイプやクリック、タップが主流になった。スロットマシンやコインランドリーでさえキャッシュレス化が進んだ。
ビーチ財務官は「1セント硬貨は、その額面より製造コストのほうが高い」とフィラデルフィアで語った。「生産をやめれば、納税者の負担は年間推計5600万ドル(約87億円)減少する」。
財務長官スコット・ベッセントはすでに、トランプ大統領の指示に従い、フィラデルフィアとデンバーの造幣局に生産停止を正式に命じていた。トランプ大統領は2月のトゥルースソーシャルの投稿でこう記していた。「長年、米国は1枚作るのに2セント以上かかるペニーを鋳造してきた。こんなのは無駄の極みだ! 私は財務長官に新しいペニーの生産を止めるよう命じた」。
米国の硬貨生産量は、すでにピークの2021年の150億枚から、2024年は60億枚未満へと大きく減少していた。造幣局の人員も削減され、400人ほどいた職員は約300人にまで減った。自動化の進展と採用抑制が進んだためだ。
年間数百億円規模の損失で、造幣局の硬貨ビジネスが赤字化
米造幣局が議会向けに提出した年次報告書によれば、2024会計年度には約32億枚のペニーを製造する過程で、総額8530万ドル(約132億円)の損失が計上された。1枚あたりの製造コストは約0.037ドル(約3.69セント[約6円])で、前年の0.031ドル(約5円)から上昇していた。なお5セント(約8円)硬貨の「ニッケル」も赤字で、額面0.05ドル(約8円)に対し製造コストは約0.14ドル(約22円)。一方、10セント(約16円)硬貨の製造コストは6セント(約9円)未満、25セント(約39円)硬貨は約15セント(約23円)、50セント(約78円)硬貨は約34セント(約53円)となっている。


