北米

2025.11.18 11:30

現金離れの米国で「1セント硬貨」が製造終了、小売業界に混乱の懸念

2025年11月12日、ペンシルベニア州フィラデルフィアにある米国造幣局において、最後の1セント硬貨が打刻機に入れられた。(Photo by Demetrius Freeman/The Washington Post via Getty Images)

2025年11月12日、ペンシルベニア州フィラデルフィアにある米国造幣局において、最後の1セント硬貨が打刻機に入れられた。(Photo by Demetrius Freeman/The Washington Post via Getty Images)

米国で最も古い硬貨である1セント硬貨(ペニー)は1793年以来、発行され続けてきた。しかし、トランプ大統領が2025年早くに製造中止を命じたのを受け、米財務省は11月12日に製造を終了した。これにより、「99セント」を謳う割引価格セールは消えてしまうのか? 米国の売上税にはどのような影響が及ぶのだろうか?

トランプ政権の決定で、1セント硬貨の製造が終了

すべては、ボタンを押すだけで終わった。12日、米国財務省のブランドン・ビーチ財務官がフィラデルフィア造幣局の「ペニー室」にあるスチール製の操作盤の前に立ち、最後の1セント硬貨のバッチをトレイへと落とした。この瞬間、ペニーは公式に“終焉”を迎えた。今後は一切、この硬貨は製造されず、古い硬貨が貯金箱やソファの隙間、机の引き出しに消えていくにつれて、流通量は徐々に減っていく。

2025年5月にトランプ政権の任命で就任したビーチ財務官は、ペニー廃止を「トランプ大統領の常識的な政策アジェンダの成果」と称賛した。彼は「米国が流通硬貨を退役させるのは1857年以来、初めての歴史的瞬間だ」と語った。

ただし、この一幕は“テレビ映え”を狙った演出でもあった。職員によれば、実際のところ、一般流通向けのペニーはすでに7月の段階で造幣局を離れていたという。だが、昨今の政治の多くがそうであるように、重要なのは「見せ方」だった(なお、この日鋳造された“最後のペニー”は競売にかけられ、流通には回らない)。

米国の歴史と共に歩んだ、ペニーの誕生と変遷

ペニーの歴史は、アメリカという国の歩みとほぼ同じ長さがある。合衆国憲法が正式に批准されて間もなく、新政府は国づくりの細部を固め始めた。その一環として1792年に制定されたのが「鋳貨法」で、金貨・銀貨・銅貨の鋳造を命じていた。ここには、イーグル金貨(10ドル)、ハーフ・イーグル(5ドル)、クォーター・イーグル(2.5ドル)、1ドル、50セント、25セント、ディスメ(10セント硬貨の当初の呼び名。1837年にダイムへ変更)、ハーフ・ディスメ(現在のニッケル)、1セント、0.5セントが含まれていた。

1793年に鋳造された最初のペニーは、当時は安価だった純銅製で、自由を象徴する長い髪の女性像が刻まれていた。このリバティ像は60年以上にわたりペニーの表面を飾った。

1857年、1セント硬貨は小型化され、88%が銅、12%がニッケルという低コストの素材に切り替わった。デザインも刷新され、1857〜1858年には表面に飛翔するワシ、裏面にリースを配置。1859〜1909年は「インディアン・ヘッド」デザインが続いた。

1909年には、エイブラハム・リンカーンの生誕100周年を記念し、米国硬貨として初めて大統領の肖像として採用された。20世紀を通じて、ペニーは基本的に銅とニッケルの合金で作られたが、例外もあった。第二次世界大戦中の1943年のみは、銅不足から亜鉛めっき鋼が使われ、戦後に再び銅・ニッケルに戻された。

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翻訳=上田裕資

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