宇宙

2025.11.22 11:00

アルツハイマー病の異常タンパク質、地球最初の生命の手がかりになる可能性

国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されているNASAのリング・シアード・ドロップ(Ring Sheared Drop)実験装置。微小重力下で液滴を表面張力で保持し、ずれ流動を起こす装置で、アルツハイマー病などの疾患に関連するアミロイドの凝集や線維生成に関する研究に用いられている(NASA)

さらにアミロイドは、酵素がどのように進化したかなど、前生物化学における知識の最大の欠落領域の1つを埋める助けになる可能性がある。ザイコフスキーによると、現代の酵素は長く連なるタンパク質で、精密な立体構造を成すように折り畳まれて耐湿性のコアを形成し、化学反応を水から保護する。

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だが、このように長いタンパク質は、リボソーム(タンパク質合成を行う細胞小器官)によってしか形成できない。

ではあるが、リボソーム自体が複雑なタンパク質であるため、生命の発生以前には存在していなかった可能性があると、ザイコフスキーは指摘している。

それでは、アミロイドはRNAやDNAの誕生前に存在していたのだろうか。

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ザイコフスキーによると、アミロイドはRNAやDNAより前ではなく同時期に生じたのかもしれない。

NASAの無人探査機オシリス・レックス(OSIRIS-REx)が地球に持ち帰ったような小惑星サンプルには、アミノ酸のみならず、DNAやRNAなどの核酸の基本構成要素(核酸塩基)も含まれている。

このことは初期の地球で、凝集してアミロイド繊維や原始的な核酸になることが可能な複数のペプチドが共存していた可能性が高いことを示唆していると、ザイコフスキーは指摘する。このシナリオでは、アミロイドは最初の生命のための安定な基盤(足場)を提供した一方、RNAやDNAは情報の担体として発達し、共に生命の最初の生体系の土台作りをした可能性があると、ザイコフスキーは説明している。

NASAのオシリス・レックス(OSIRIS-REx)探査機が約24kmの距離から撮影した小惑星ベンヌ(Bennu)。OSIRIS-RExはベンヌ表面から採取したサンプル(試料)入りカプセルを2023年9月に地球に投下し地球への小惑星試料持ち帰り(サンプルリターン)に成功した(NASA/Goddard/University of Arizona)
NASAのオシリス・レックス(OSIRIS-REx)探査機が約24kmの距離から撮影した小惑星ベンヌ(Bennu)。OSIRIS-RExはベンヌ表面から採取したサンプル(試料)入りカプセルを2023年9月に地球に投下し地球への小惑星試料持ち帰り(サンプルリターン)に成功した(NASA/Goddard/University of Arizona)

神経の大惨事

だが今日では、アミロイドは神経疾患で破壊的な結果を招く恐れがあることで最もよく知られる。こうした脳疾患の患者では、はるかに多量のアミロイドタンパク質が生成され、これが神経の変性や機能低下を引き起こしたり、文字通りの空洞を脳内に発生させたりする可能性がある。

それでも、タンパク質の折り畳みや凝集を統制する一般的な法則を明らかにすることで、アミロイドの基礎研究は神経変性につながる可能性のある経路を示すより明確な地図を提供すると、ザイコフスキーは説明する。これは、真に因果関係があるものと副作用の1つであるものを区別する助けになり、治療できる可能性のあるものを浮き彫りにすると、ザイコフスキーは続けた。

まとめ

アミロイドに関する基本的な科学的知識は、医学と宇宙生物学の両分野を進歩させ、それぞれの分野が互いに向上させ合うことにつながると、ザイコフスキーは述べている。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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