宇宙

2025.11.22 11:00

アルツハイマー病の異常タンパク質、地球最初の生命の手がかりになる可能性

国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されているNASAのリング・シアード・ドロップ(Ring Sheared Drop)実験装置。微小重力下で液滴を表面張力で保持し、ずれ流動を起こす装置で、アルツハイマー病などの疾患に関連するアミロイドの凝集や線維生成に関する研究に用いられている(NASA)

国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されているNASAのリング・シアード・ドロップ(Ring Sheared Drop)実験装置。微小重力下で液滴を表面張力で保持し、ずれ流動を起こす装置で、アルツハイマー病などの疾患に関連するアミロイドの凝集や線維生成に関する研究に用いられている(NASA)

アルツハイマー病などの神経疾患の患者の体内に異常に凝集するタンパク質分子に焦点を当てた研究が、分子神経生物学者によって進められている。研究の目的は、地球および地球外の生命の起源に関する新たな洞察の獲得だ。

アミロイド(さまざまな臓器や組織の内部に凝集する粘着性の線維状タンパク質の沈着物)は、地球の前生物化学につながった一連の出来事に関する知識を宇宙生物学者に与えている。また同時に、この奇妙な分子構造に関する研究によって得られる知見は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病や2型糖尿病のような疾患も含む衰弱性の神経疾患に関する医学研究者の理解の向上に役立つかもしれない。

このタンパク質の凝集によって問題が生じる原因は何だろうか。

細胞内のタンパク質は通常、非常に特殊で綿密に制御された形状に折り畳まれている。生物学では、形状によってあらゆる規模の機能が決まると、ポーランドのAGH科学技術大学の分子神経生物学者トマシュ・ザイコフスキーは、アイスランドの首都レイキャビクで開かれた欧州宇宙生物学学会(EAI)の隔年例会「BEACON 25」での取材で語った。時には、タンパク質の折り畳み(フォールディング)の過程が正しく行われないことがあると、ザイコフスキーは続けた。

異常な折り畳み構造のタンパク質

特定のタンパク質が折り畳み異常(ミスフォールド)を生じて連鎖反応を引き起こし、他の同じタンパク質を次々と折り畳み異常の形態に変換していく場合があり、これは重篤な神経疾患の多くで起きている現象だ。

なぜアミロイドは、生命の起源を理解する上で重要なのだろうか。

隕石によって地球に運ばれる可能性のあるアミノ酸は、生命の発生を可能にする前生物的分子の有力な候補であることが知られているからだと、ザイコフスキーは指摘する。

アミロイドは、地球上で容易に生成される短鎖アミノ酸(ペプチド)から容易に形成される可能性がある。また、完全に形成されたペプチドが隕石の内部に存在することが、いくつかの過去研究で示唆されているが、これに関しては依然としてはるかに確実性に乏しい。

古代の構造

ザイコフスキーによると、アミロイドは安定性(熱、酵素、化学分解に対する耐性)を持つため、35億~40億年前のまさに生物化学の黎明期における、地球最古の分子構造の1つの本質的に有力な候補となる。

アミロイドは、細胞が出現する以前にすでに形成されていたかもしれない。

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翻訳=河原稔

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