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2025.11.17 18:00

IWSCの栄誉リストを飾る、世界最高の2本のバーボン

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インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション(IWSC)は、酒類業界で最も信頼できる品質の裁定者の1つとなっている。同団体の新しい「Top 50 Wine and Spirit Producers(トップ50ワイン&スピリッツ生産者)」プログラムは、たまたまメダルを取るのではなく、全レンジで毎年受賞レベルのボトリングを提供し続ける生産者に光を当てる。本稿は、そうした生産者がリスト入りを果たすのに貢献した個別のバーボンに焦点を当てる。

ロンドンに拠点を置き、1969年に創設されたIWSCは、現在90超の国から数千点の出品を集め、厳格なブラインド・テイスティングの手順のもとで横並びに審査している。Top 50プログラムの一環として、筆者はIWSCと協働して勝者の常連といえるスピリッツの栄誉リスト(honor roll、オナーロール)を編成した。

選出されるには、過去5回の大会のうち少なくとも3回で金メダルを獲得していなければならない。これは、スター性と同等に持続的な卓越性を重視する厳しい基準である。主要なあらゆるカテゴリーにまたがる何千という出品の中で、この基準を満たしたのはわずか46銘柄であり、バーボンはそのうち2点だけであった。

本稿は、その2本のバーボンを取り上げ、簡潔な背景説明と筆者のテイスティング所感を示す。両者は、ブレンディングと樽管理の異なるアプローチが、トップクラスの熟成バーボンを特徴づける重層的な複雑さ、奥行き、そして静かな豊饒さをいかに生み出すかを示している。

ブラントン・ストレート・フロム・ザ・バレル/ケンタッキー・ストレート・バーボン・ウイスキー(Blanton’s Straight From The Barrel, Kentucky Straight Bourbon Whiskey) 65% ABV、750ml

ブラントン(Jeffrey Greenberg/Universal Images Group via Getty Images)
ブラントン(Jeffrey Greenberg/Universal Images Group via Getty Images)

ブラントンは現代バーボン史における金字塔の1つだ。1984年、マスター・ディスティラーのエルマー・T・リーは、師であるアルバート・B・ブラントン大佐から着想を得て、当時のBuffalo Trace(バッファロー・トレース)向けにブラントンを生み出した。バーボンが苦境にあり、「シングルバレル」という考え方がまだ消費者に浸透していなかった時代に、ブラントンはケンタッキー州フランクフォートの蒸溜所にあるWarehouse H(ウェアハウスH)の厳選樽を中核に据え、現代的な最初のシングルバレル・バーボンとして売り出された。

ストレート・フロム・ザ・バレル(SFTB)は、ブラントンの中で最も強烈で妥協のない表現である。これはBuffalo Traceの「ハイライ(高ライ麦)マッシュビル#2」に基づく。Buffalo Traceはマッシュビル(配合レシピ)の詳細を公表していないが、#2は一般にトウモロコシ60%、ライ麦15%、モルト大麦25%と考えられている。ブラントンのほか、Elmer T. Lee(エルマー・T・リー)、Ancient Age(エンシェント・エイジ)、Rock Hill Farms(ロック・ヒル・ファームズ)、Hancock’s Reserve(ハンコックス・リザーブ)も同一マッシュビルだ。

熟成年数の表示はないが、通常は樽により6~9年の範囲である。プルーフも樽によって異なるが、概ね120~135プルーフ(60~67% ABV)。熟成は伝統的に、金属外装のリックハウスとして知られ、より速く強い熟成が進むWarehouse Hで行われる。

このバーボンは通常、加水せず樽出しの度数でボトリングされ、ノンチルフィルタードである。

当初、SFTBは日本や欧州の一部などの輸出市場、およびトラベルリテール向けに限定されていた。米国内での希少性が愛好家の間でのカルト的地位を高めた。現在は入手経路が広がったとはいえ依然として稀少で、推奨小売価格に対してプレミアムで販売されることが多い。各ボトルには固有の樽番号、ダンプ(瓶詰)日、プルーフが記載される。

このシリーズはシングルバレルのボトリングで構成されるため、共通のDNAを共有していても、各バッチにはわずかな違いが出る。

香りは非常に芳醇で、明確な甘さが立ち、ダーク/焦がしキャラメル、バタースコッチ、ブラウンシュガー、バニラ、トーストしたマシュマロが織りなす重層的な複雑さがある。オレンジピール、焼きリンゴ、ダークチェリー、レーズン、ドライフィグといったフルーティな要素も感じられる。

味わいには、ハイライ由来の古典的なスパイス、すなわちシナモン、クローブ、粗挽き黒胡椒、オールスパイス、ほのかなナツメグが表れる。開いてくると、焦がしオーク、タバコ葉、古い革、カカオ、ローストナッツの香りが現れる。

少量の加水はアルコールの刺す感覚を和らげ、甘い蜂蜜、シトラスオイル、枯れたオーク、控えめなフローラルの香りをさらに引き出す。

口中は力強くフルボディで、甘くオイリー。明確な口中重量感と噛み応えのあるテクスチャー、そしてはっきりしたアルコールの熱がある。糖蜜、ダークハニー、キャラメルコーン、バニラクリーム、トフィー、ダークチョコレート、オレンジマーマレードの風味が広がる。

ハイライ成分は、シナモン・レッドホッツ(シナモンの辛口キャンディ)、クローブ、黒胡椒、ほのかなミントに加え、枯れたオーク、木炭、シガーボックス、トーストしたココナッツ、ローストしたピーカンをもたらす。

水をひとさじ加えると質感はビロードのように、ほとんどシロップ状になり、甘さとシトラスのニュアンスが強調される。

フィニッシュは極めて長く、ダークキャラメル、カカオ、オレンジピール、焦がしオーク、ベーキングスパイス、レザー、淡いハーバルなタバコのニュアンス、そして穏やかなタンニンの収斂が余韻として残る。

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翻訳=酒匂寛

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