気候・環境

2025.11.15 19:53

気候目標の進捗状況は「極めて不十分」と研究が警告

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気候危機に対処し地球温暖化を抑制するための世界的な進展のペースと規模は「極めて不十分」だと、新たな分析が指摘している。

システムズ・チェンジ・ラボが発表した気候行動の現状2025報告書は、パリ協定で定められた平均気温上昇を1.5度に抑える取り組みが世界的に停滞しており、気候行動の45の指標のいずれも2030年の目標達成に向けて軌道に乗っていないと警告している。

この調査によると、評価された45の指標のほとんどは正しい方向に進んでいるものの、2030年のパリ協定目標を達成する軌道に乗っているものは一つもないという。

報告書は、6つの指標については「有望だが遅すぎる」ペースで進展しており、他の29の指標については必要なスピードを大幅に下回っていると指摘している。

さらに5つの指標は完全に誤った方向に向かっており、緊急の軌道修正が必要とされ、残りの5つの指標については進捗を評価するための十分なデータがないという。

例えば、以前は唯一「軌道に乗っている」とされていた世界の乗用車販売に占める電気自動車のシェアは、「軌道から外れている」に格下げされた。

報告書によると、電気自動車は依然として急速に普及しており、2024年の世界の乗用車販売に占める割合は過去最高の22%(2020年の4.4%から上昇)に達したが、欧州や米国などの主要市場では成長が鈍化しているという。

一方で、民間の気候資金という別の指標は「大幅に軌道から外れている」から単に「軌道から外れている」に格上げされた。

報告書によると、資金は2022年の約8700億ドルから2023年には過去最高の1.3兆ドルに増加し、特に中国と西欧の個人、企業、投資家がこの伸びを牽引したという。

民間の気候資金の増加に加えて、報告書は太陽光と風力による世界の発電シェアが2015年以降3倍以上に増加し、太陽光が史上最も急速に成長している電力源になっていることも強調している。

また、グリーン水素や技術的二酸化炭素除去など、10年前はアイデアや小規模なパイロットプロジェクトに過ぎなかった新興技術が、適切な支援があれば主流のブレークスルーに近づく可能性があるとしている。

この報告書は、ベゾス・アース・ファンド、クライメート・アナリティクス、クライメートワークス財団、気候ハイレベル・チャンピオンズ、世界資源研究所(WRI)の共同成果である。

オンライン記者会見で、WRIの研究員でこの報告書の共同主執筆者であるクレア・シューマー氏は、「私たちは概ね正しいことをしているが、単に十分な速さで動いていない」ことは間違いないと述べた。

シューマー氏はさらに、石炭による世界の発電シェアは2024年にわずかに減少したものの、全体的な電力需要の増加により、石炭の総使用量は過去最高を記録したと付け加えた。

同氏は、石炭はガスとともに、発電部門における温室効果ガス排出の最大の発生源であり続けていると述べた。

「ここでの問題は、化石燃料に依存する電力システムが大きな連鎖効果をもたらすことです。建物、産業、輸送の脱炭素化はすべて、脱炭素化された電力網に依存しています。

「このメッセージは明確です。石炭の使用が記録を更新し続けるなら、温暖化を1.5度に抑えることは単にできません。世界は石炭火力発電を現在のペースの10倍以上速く段階的に廃止する必要があります。これは毎年約360の平均的な規模の石炭火力発電所を閉鎖し、計画中のすべてのプロジェクトを廃止することに相当します」

また、ベゾス・アース・ファンドの科学・データ・システム変革責任者であるケリー・レヴィン氏は記者会見で、過去10年間で多くの進展があったものの、2030年以降に必要とされる速さには「まだ全く足りていない」と述べた。

レヴィン氏は、温室効果ガスの排出が増加し続け、気温が上昇し、世界中で火災が家屋や生態系を破壊する中、気候変動は「進行し続けている」と付け加えた。

「問題は変化が起こり得るかどうかではなく、本当に時間内に変化を起こせるかどうかです」とレヴィン氏は述べた。

forbes.com 原文

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