ロシア軍の突撃部隊にとって、ある防護装備が必須になっている。装甲ではなく、赤外線カメラから身を隠すためのサーマルポンチョ、いわゆる「透明マント」だ。サーマルポンチョは、ドローン(無人機)に覆われた「グレーゾーン」を横切ろうとする兵士にとって、文字どおりの必携品である。熱シグネチャーを完全に隠すことは不可能なものの、ロシア軍の突撃兵が生き延びられるかどうかはこの衣服にかかっている。
戦車からバイク、ほふく前進へ
この戦争の初期、ロシア軍の突撃は伝統的な諸兵科連合ドクトリンに従い、戦車や装甲兵員輸送車を組み合わせて行われていた。2023年には、こうした突撃はウクライナ軍のFPV(一人称視点)ドローンによる遠方からの攻撃で次々に撃破されるようになった。そこで、危険地帯をできるだけ素早く突っ切るべく、装甲車両の代わりに全地形対応車やバギー、オートバイが使われ出した。そして現在、この接近方法は少人数の歩兵による徒歩での浸透戦術に置き換えられつつある。
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)が10月に公表した報告書は、ロシア軍の新たな戦術をこう説明している。「ロシア兵は通常、取っ手で体から離して持つ熱遮断用のシートやテントを用いて、2〜5人で浸透する。兵士は首に無線機をぶら下げ、足元を照らすために股の間に懐中電灯を吊り下げている」
報告書は「十分な数の兵士が前方の『巣』(潜伏地点)に揃うと、ウクライナ軍の防御陣地を襲撃する」と述べている。
Russian soldiers in heat-insulating anti-drone ponchos tried to approach and attack frontline positions. By the 59th Brigade of the @usf_army. pic.twitter.com/DgTfG8ImnS
— Special Kherson Cat 🐈🇺🇦 (@bayraktar_1love) June 24, 2025
ウクライナの映画監督で現在は兵士として戦うボロディミル・デムチェンコは10月、X(旧ツイッター)への投稿で、ロシア軍のさらに遅い接近方法を説明している。「新しい突撃戦術。侵入者は遮熱マントで身を覆って数日間、匍匐(ほふく)前進する。糧食と水はドローンから投下される。一晩に数十メートル、もしかすると数百メートル這って進む。2〜5人の兵士だ」
ウクライナ関連の軍事情報サイト「Counteroffensive Pro」もロシア軍の新たな戦術について「遮熱マントをまとった戦闘員3〜5人のグループが送り出される」と解説し、「ウクライナ軍が5人中3人を排除しても、残る2人は目標地点に到達するチャンスがある」と続けている。
これらの報告で一致している点は、熱を遮蔽する偽装がロシア軍で不可欠になっているということだ。



