「すべて見ている」ドローンの目を避ける
いまでは戦場のあらゆる場所がドローンで監視されている。車両の動きがあれば何キロも離れたところから発見される。それに比べると、徒歩の兵士は見つかりにくい。前進するのに最も適した時間帯は夜だ。夜間に侵入者を発見できるのは、温度差によって物体を映し出すサーマルイメージング(熱画像)カメラしかない。両軍とも、サーマルイメージングカメラを搭載した中国DJI製「Mavic 3T」を夜間の偵察用に広く使用している。
そこで登場したのがサーマルポンチョだ。この偽装服は普通、ナイロン製で、体の熱が外に逃げるのを防ぐ反射層を持ち、さらに、熱を素早く分散させるためアルミニウムや銀の粒子で覆われていることもある。これを身にまとうことで、兵士を周囲と同程度の温度の物体として風景に溶け込ませ、その温かい体がドローンの映像で明るい標識のように目立つのを防ぐ狙いだ。一般的なサーマルポンチョでは、体からの熱放射を最大90%抑制すると紹介されている。
ロシア兵は、通常は陣地やテントの偽装に使う遮熱シートを、身を隠すための覆いに流用していることが映像で確認されている。体の熱を隠蔽できるものなら何でもよいということだろう。
ただし、ポンチョを装備するだけでは不十分な場合が多い。侵入者は「不可視」の状態になるため、「サーマルクロスオーバー」と呼ばれる時間帯を待つ。草木、地面、水といった物体は、日光によって温まる速度や、冷えていく速度も異なるので、熱のコントラストが生じる。だが、さまざまな物体の温度が一時的に近くなる時間帯が1日に2回ある。これがサーマルクロスオーバーだ。この時間帯には熱のコントラストが大幅に低下するため、サーマルイメージングカメラでの物体の判別は難しくなる。したがって、兵士は発見されずに前進できる可能性が大きく高まる。ほかの時間帯には、ポンチョを着ていると冷たい部分として逆に目立ってしまう危険性がある。実際にそうなったロシア兵の例もある。
The problem with Russian thermal insulating ponchos is that they trap the heat of the human body, but at the same time appear much colder than the surrounding environment.
— Special Kherson Cat 🐈🇺🇦 (@bayraktar_1love) August 26, 2025
So instead of showing up as a bright white (warm) spot that’s easy to detect with a drone’s thermal… https://t.co/gJlMguqU09 pic.twitter.com/50ymGbnYTf
ロシア軍はこのほか、霧や雨など、視認性が低下する気象条件下で前進を図ることも好む。


