筆者は、住むのに最適な場所、働くのに最適な場所、訪れるのに最適な場所に関する記事を執筆することが多い。だが、この3つの条件すべてを満たした世界最高の都市、つまり、住むにも、働くにも、訪れるにも最適な都市を探しているとしたらどうだろうか? カナダのコンサルティング企業レゾナンスと仏調査会社イプソスが共同で発表した報告書がその答えを提示している。
両社は、人口100万人以上を擁する世界270以上の都市を分析した。単一の指標に焦点を当てるランキングとは異なり、本報告書は空港の接続性や教育水準、文化、ナイトライフ、さらにはソーシャルメディア(SNS)上の評判に至るまで、数百もの指標に基づいている。さらに、世界30カ国の2万1000人以上を対象とした聞き取り調査の結果も加味している。
レゾナンスは、住みやすさ、評判、繁栄という3つの相互に関連した柱について各都市を評価した。住みやすさには、大気の質、歩行者環境、健康、生活水準などの指標が含まれる。評判には、インターネット上での人気度やSNS上に上げられた動画数、ナイトライフ、美術館などの指標が含まれる。繁栄には、大企業の数、経済生産高、事業環境、失業率などの指標が含まれる。
レゾナンスのクリス・フェア社長は、国内総生産(GDP)や物価、空港の接続性といった従来の指標に加え、新興企業、住民や旅行者によるSNS上の投稿、文化行事、気候変動リスクと回復性といった都市の活力に関する新たな指標を測定していると説明した。同社はまた、中国のSNS「微博(ウェイボ)」や「小紅書」などからのデータを統合することで、調査範囲を強化した。フェア社長は、これにより報告書に「真の現地の視点」が含まれることになると語った。
世界最高の都市はロンドン
11年連続で世界最高の都市に選ばれたのは英首都のロンドンだった。ロンドンは住みやすさで3点、評判で2点、繁栄で2点を獲得した。そのほか、空港で1位、大企業の数でも1位となった。報告書は「ロンドンの魅力は学生や起業家から観光客、大企業に至るまで、世界中から人々を引き付けている」と評価した。
ロンドンは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)後の回復が著しい。昨年の海外旅行者の消費額は220億ドル(約3兆4000億円)近くに達し、ニューヨークやドバイなどを上回った。ロンドンは技術分野への外国直接投資でも世界最高水準にあり、ミシュラン星付きレストランの数も記録的な数に上っている。
住宅不動産市場は停滞しているものの、米国人はこの状況を利用しており、不動産業者によれば、米国人からの問い合わせが殺到しているという。商業用不動産も、米国人の買い手によって回復傾向にある。レゾナンスによると、24年第1四半期に英国の商業用不動産に投資された米国の資金は37億8000万ドル(約5800億円)に上った。



