「米国ブランド」の人気は低下
米国は引き続き強い存在感を示しているが、上位20都市の数は昨年のランキングより減少した。2位のニューヨーク以外にトップ20入りした都市は、12位のロサンゼルスだけだった。米国のトップ5は上記2都市のほか、26位のマイアミ、28位のサンフランシスコ、そして35位のシカゴだ。デンバー(84位)、オースティン(87位)、ボルティモア(89位)といった比較的小規模な都市も上位100都市に入っている。
ランキングに掲載された米国の都市数はどの国よりも多く、同国が持続的な強さを保っていることを示している。だが、イプソスのジェーソン・マクグラス上級副社長によれば、「米国ブランド」に対する世界的な認識の変化が、同国に対する見方を変え始めているという。
マクグラス上級副社長は次のように指摘した。「イプソスが最近実施した世論調査では、米国ブランドに対する世界的な反発が強まっていることが示された。『米国的』だと認識されるブランドは、信頼性と購買意向で劣勢に立たされ、同じブランドが『国際的』だと認識される場合と比べて約20ポイント低い数値を示した。これは間違いなく、米国とその都市に対する認識にも波及し、米国の都市に住みたい、働きたい、旅行したいという意欲に、行動面での影響をもたらしている」
こうした世界的な感情が今年の結果に反映されたようだ。マクグラス上級副社長は「世界中の回答者の米国への旅行意欲が低下している一方で、他の旅行先への関心が高まっていることが調査から明らかになった」と説明した。
世界的な動向
ランキングを支配しているのは依然として欧州の都市だが、アジア勢が急速に差を縮めている。フェア社長は「旅行パターンが東へと移行する中で、アジア太平洋地域が前例のない成長を遂げている」と述べた。
トップ20に入るアジア太平洋地域の都市を見てみよう。東京(4位)、シンガポール(6位)、シドニー(11位)、ソウル(13位)、北京(15位)、上海(16位)、香港(19位)、そしてアジアと欧州を結ぶイスタンブールが20位だ。
フェア社長は、世界中の都市が直面する最大の課題には「加速する気候変動の影響、軍事・貿易同盟の変容、そして人工知能(AI)の急速な普及」が含まれると指摘。AIが「パンデミック以上に都市中心部に影響を与える可能性がある」と警告した。
一方、マクグラス上級副社長は、変化する世界情勢は持続的な緊張によって特徴付けられていると指摘した。「各国が世界経済をゼロサムゲームの視点で捉えるにつれ、ナショナリズムと保護貿易主義の傾向が強まっている。こうした世界的な動向は日用品の価格に影響を与え、政治情勢と消費者行動の双方を揺るがしている」


