我々の多くは、イノベーションに取り憑かれている。我々は、ガレージから生まれたスタートアップや、数十億ドル規模で評価されるユニコーン企業、AIや量子コンピューティング、最新のメタバースのローンチといった輝かしい新技術をもてはやす。ただし我々は社会全体として、イノベーションと発明をしばしば混同している。
発明が新たなものを生み出すことであるのに対し、イノベーションは新たな価値を創造することだ。そして、最も強力で、業界を覆すような破壊的革新(ディスラプション)が、新たな技術から始まることはめったにない。それらは、新たな思考方法から始まり、マインドセットにおける変化から始まる。
技術は、実現手段に過ぎない。マインドセットこそが触媒なのだ。
思考の転換
過去20年間で現れた、最も大きなイノベーションを考えてみよう。Airbnbは空き部屋を発明したわけではない。Uberが自動車を発明したわけでもない。彼らは、既存産業に思考の転換をもたらしたのだ。
ホテル業界の主流的な考え方は、「我々は資産を所有しなければならない。我々のビジネスは不動産管理だ」というものだった。だが、Airbnb創業者のブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアは、異なる問いを投げかけた。「もし、資産が部屋ではなく信頼だったとしたら? もし、すでに存在している世界中の部屋という在庫を解放できるとしたら?」
彼らが気づいたのは技術的な問題ではなく、視点の問題だった。彼らが構築したプラットフォームは、そうした「マインドセットのシフト」の結果であって、原因ではなかった。



