ジャガイモはまた、アイルランドやドイツ、ロシアなどの国々の人口爆発を支えた作物だ。カロリー密度が高いため、栽培面積が小さめでも家族全員の腹を満たすことができた。こうしてジャガイモは、農業経済という面ではとりわけ大きな変化をもたらす作物となった。
とはいえ、ジャガイモへの依存は生物学的な脆弱性を招いた。1840年代にアイルランドを襲った有名なジャガイモ飢饉は、卵菌類の疫病菌であるジャガイモ疫病が原因であり、遺伝的多様性の低さという危険性が浮き彫りになった。欧州では、たった一つの品種が栽培されており、疫病の影響を受けやすかったのだ。
4. タバコ
コロンブスが残した植物のレガシーのなかで最も矛盾をはらんでいると言えるのは、タバコ(学名:Nicotiana tabacum)かもしれない。南米とカリブ海を原産とするタバコは、欧州人到来のはるか以前から、先住民が栽培し、儀式の一環として吸っていた。コロンブスがイスパニョーラ島(現在のハイチとドミニカ共和国)に到達したとき、現地民が吸っているタバコを目にした船員が、乾燥させたタバコの葉と種をスペインに持ち帰った。
タバコがもつ最大の化学的特徴は、言うまでもなく、ニコチンの含有だ。ニコチンは、刺激作用と強い神経毒性をもつアルカロイドの一種だ。少量なら、脳内のドーパミン放出を促し、報酬と覚醒の感覚を生み出す。しかしご存じのとおり、大量に吸えば、予防可能な疾病を引き起こしてしまう。

あまり知られていないが、ニコチンはもともと、植物が害虫を寄せつけないために進化させた、天然の防御機能だ。しかし人間の視点から見れば、タバコは、史上最も儲かる世界的産業の一つを築いた植物となった。17世紀になるころには、タバコ栽培は、いくつかの植民地経済全体を加速させていた。とりわけ恩恵を享受したのは、当時英領の植民地だった米国のバージニアとカリブ海諸国だ。
生態学的に見ると、タバコ栽培が成功したのは、繁殖が容易であることと、さまざまな土壌に適応できることが要因だ。しかし、人間に対する生理学的な影響は、どう見ても無害ではなかった。20世紀になると、疫学的な研究が行われ、喫煙とがんの関連性が明確に示された。
進化的に見ると、大航海時代にコロンブスが何度も海を渡ったことは、不可逆的な地球生態学の実験にほかならなかった。それから5世紀が過ぎた今もなお、コロンブスによる影響は続いている。私たちが口にするチョコレートバーやフライドポテト、あちこちの大陸を覆うトウモロコシ畑、世界中で売られているタバコに、その影響を見て取ることができる。


