2. トウモロコシ
トウモロコシ(学名:Zea mays)ほど、人為選択の力を明確に物語るものはほぼないと言えるだろう。『eLife』に掲載された研究にもあるように、トウモロコシが現在のメキシコ南部で初めて栽培されたのは、おおよそ9000年前のことだ。もともとは「テオシント」というイネ科の野生植物だった。その後、コロンブスとともにやって来た船員が、カリブ海の島々で栽培されているのを目にし、欧州へ持ち帰った。

トウモロコシは16世紀初頭にスペインに持ち込まれ、一気に広まった。地中海沿岸地域を皮切りに、アフリカ、アジアへと伝わっていったのだ。広く栽培されるようになったのは、遺伝的な適応力のおかげだ。トウモロコシは、多様な気候と標高に適応する力があることで知られている。そのため、ペルーの高地であろうが、サハラ砂漠以南のアフリカだろうが、いったん植えられれば、どこでも繁殖した。
トウモロコシの適応力の高さは、その生物学的な構造に理由がある。前述した研究でも指摘されているように、トウモロコシはC4型光合成の回路を有する作物だ。これは簡単に言うと、CO2を4つの炭素原子を持つ「四炭素化合物」に固定する植物で、光合成の効率が高い。そのため、特に光量や温度が高い環境では、小麦やイネといったC3型光合成の作物よりも、ずっと効率的に二酸化炭素を利用できるのだ。
こうした理由から、トウモロコシは、地球上で最も生産性の高い穀類に数えられている。その生産性は、選抜育種(より有用な品種を選んで掛け合わせ育種する品種改良法)によってさらに高められてきたが、最近では遺伝子組み換えも行われている。
3. ジャガイモ
あまり知られていないことだが、ジャガイモ(学名:Solanum tuberosum)は、16世紀後半になるまで欧州には存在していなかった。ペルーとボリビアの高地でジャガイモが栽培されるようになったのは、およそ8000年前。その後、スペイン人がインカ帝国の探検にやって来たときに目に留め、欧州に戻る際に、その塊茎を持ち帰った。
研究でも指摘されているように、ジャガイモは非常に栄養価が高い。炭水化物、ビタミンC、カリウムが豊富で、単位面積当たりのエネルギー収量も桁外れだ。また、穀類とは異なり、ジャガイモは地中で育つため、干ばつや霜の影響を受けにくい。こうした理由から、18世紀になるころには欧州全域で主食となった。



