食&酒

2025.11.20 14:15

【ボジョレーヌーヴォー解禁】市場「20年で7分の1」に大手撤退、だがサントリーは?

勝沼醸造の新酒のラベルは、日大芸術学部の学生から公募したデザインを採用

2025年のボジョレー・ヌーヴォーについて、サントリーは「太陽に恵まれた当たり年で、ぎゅぎゅっと甘濃い味わい」と評価する。香りのボリュームがあり、味わいにも豊かな熟度が感じられるという。

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同社によれば、消費者の嗜好は多様化している一方で、“旬のものを楽しみたい” というニーズは根強く、需要は堅調だとしている。ボジョレー・ヌーヴォーの狂騒が落ち着いた現在でも、日本は世界最大級の輸入国。年に一度の秋の到来を告げる風物詩として、楽しみにするファンは今も少なくない。 

ボジョレーが培った新酒文化は、いまや日本ワインにも波及している。サントリーは登美の丘ワイナリーでの日本ワインづくりの品質向上に向け、新たな醸造棟の建設に約7億円を投資するなど、日本ワインを強化。山梨県産ぶどうを100%使用した新酒2商品の販売本数を 前年比123%の9万本に増やす計画だ。

メルシャンによれば、日本ワインの新酒市場は2020〜2024年の5年間で約106%と拡大傾向にある。同社も11月に新酒3商品を発売し、前年比約2倍(約3万6千本)の販売を目指す。価値観の多様化をふまえ、自由なワインの楽しみ方を提案していく方針だという。

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日本ワインに追い風

会場を歩けば、髪がカラフルな若者グループから小さな子ども連れの家族、年配のカップルまで、思い思いにワインを楽しんでいる。34社のワイナリーが出展する試飲ブースには長蛇の列ができ、待ち時間をものともせず次の一杯を待つ人々の姿が目立った。 

長蛇の列ができていた塩山洋酒醸造の新酒
長蛇の列ができていた塩山洋酒醸造の新酒

シートやキャンプ用の椅子を持ち込み、ピクニック気分で新酒を味わう常連客もいれば、飲み比べをしながら「いろいろな個性があって面白い」と目を輝かせる若者グループの姿も。「これ美味しい。シャインマスカットのスパークリングだ」「ベーリーアリカントなんて品種もあるんだ」と、発見を楽しむ声があちこちで聞かれた。

北海道出身だという20代男性は、セイコーマートで売られるボジョレーを家族で飲むのが恒例行事だったという。「今回初めて日本の新酒に着目して来たが、新酒イベントが浸透していることに驚いた。日本の新酒も面白いですね」と笑顔で語る。

主催の山梨県ワイン酒造組合会長で勝沼醸造会長の有賀雄二氏は、「このイベントを始めた36年前とは、お客様のニーズも違う。『流行を追う消費』から、『ワインを楽しむ文化』へと移り変わってきている」と分析。さらに「ワインは、『産地』『風土』を飲むもの。新酒をきっかけに、日本ワインの品質の高さを知ってほしい」と力を込める。

輸入ワインが値上がりするなか、2000円前後で手に入る日本の新酒は、手に取りやすい選択肢だ。新酒を楽しむという行動は、いまやボジョレーだけのものではない。消費者の前には複数の新酒が並び、自分で選べる市場が育ちつつある。 

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