韓国では「翌朝配送」が、共働き世帯や子育て中の家庭など都市生活者の生活インフラとして定着している。
この前日の夜間までに注文した商品を翌朝早く受け取れるサービスは、Eコマースの競争激化とコロナ禍の影響で急速に拡大した。2025年時点で「クーパンロジスティクスサービス(CLS)」などが業界を牽引し、いまや利用者は2000万人規模に達している。
ところが最近、全国民主労働組合総連盟(民労総)が、政府主導の社会的対話で「0時から5時の翌朝配送禁止」を公式に提案した。その主張の核心は、夜間労働がもたらす健康被害への懸念だ。
民労総傘下の全国宅配労働組合は「夜勤労働の連続は国際がん研究機関(IARC)で2級発がん物質と認定されており、最低限の睡眠権と健康権を尊重すべきだ」と主張している。
また、宅配現場での過労死問題――特に前出のCLSに所属する宅配員の死亡を「過労死」として強調し、企業の労働環境改善責任を問う声も大きい。「翌朝配送禁止こそが産業全体の健全化と労働者保護に不可欠だ」(民労総幹部)という論理である。
労働現場からは圧倒的な反発の声
一方、民労総の主張に最も強く反発しているのが現場のCLS労組である。同労組は、もともと民労総の傘下であったが、2023年に脱退。現在は、正規雇用(クーパンフレンズ)を主体とした独立系労組となっている。
CLS労組とCLSパートナーズ連合会(CPA)が実施した2025年10月の調査によれば、翌朝配送を担当する現場配達員2405人のうち93パーセントが「翌朝配送禁止」に「反対」し、95パーセントが「今後も翌朝配送を続けたい」と回答。
また70パーセントが「もし翌朝配送が制限されれば他の夜間バイトを探さざるを得ない」と答えている。つまり「配送制限は労働者の生計を破綻させる」という声が圧倒的なのである。
CLS労組執行部は、民労総提案の「0から5時禁止」について「現場労働者の意見を無視した暴論」であり、「むしろ制限すれば一斉時間帯への負荷増で労働負担は逆に増大する」と反論。
また、深夜労働が規制され早朝5時から一斉配送開始の場合、「出勤時間の交通渋滞やエレベーター混雑でメリットが失われ、現実的に困難」と指摘し、「社会的対話から現場の声が排除されている」との不満も表明している。



