アート

2025.11.23 15:00

「直島新美術館」と創造的カオス|アートな数字

福武英明|ベネッセホールディングス 取締役会長、福武財団理事長

そのために欠かせないのが、コアな常設作品だ。「清水寺の舞台然り、ルーブルの『モナ・リザ』然り、『あそこにはあれがある』というもの。人を惹きつけ続ける施設には良い常設ある」と福武。変わりゆく社会で同じことを続けていくのは、忍耐が求められ、時に不安になるが、直島の場合、アートと建築をセットでつくっていることも多く「変えようがない」ことがよく働いているという。一方、数百年先を見据える活動体としては適切な新陳代謝も必要だ。

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直島・豊島・犬島で核となる常設ができたからこそ、直島新美術館は緩やかなサイクルで展示替えなど行い、「動」の役割を担っていく。また、活動を尖らせるうえでは、現在の評価に迎合せず「自分たちの美意識を追求する」ことも大切にする。「期待に応えようと寄せていくと、画一的なものになってしまう。秩序が整う前の混沌に無限の可能性があるので、創造的なカオス状態をつくっておくようにしています」。

開館から約3カ月、直島新美術館は集落のなかにあることもあり、ほかの施設に比べ地元の人のリピート来館が多いという。広く観光という視点では、日本やアジアの良質な作品が揃う場所として認知される手応えも得つつある。福武自身が面白いと感じているのが、美術館までの階段だ。「汗だくになりながら上りきって、中に入ると涼しくて。サウナでいう“ととのった”あとにフレッシュな気持ちで作品を見られる。なかなかハードですが、そのフィジカルな体験が結構いいですよ」。


直島新美術館◎現在開催中の「開館記念展示─原点から未来へ」では、地上1階・地下2階の4つのギャラリー空間とカフェ、屋外で、アジア地域出身の12組の作家の新作や代表作を紹介する(26年2月以降に一部展示替え予定)。

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福武英明◎ベネッセホールディングス取締役会長、福武財団理事長。直島・豊島・犬島を中心としたベネッセアートサイト直島のプロジェクトを牽引するほか、ニュージーランドでも投資会社ほか複数の企業を経営する。

文=鈴木奈央 写真=井上陽子 書=根本充康

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