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金融の善悪、不穏について執筆

Niyazz / Bigstock


不動産王のドナルド・トランプが、米国大統領になる可能性があるか知りたいのなら、政治評論家ではなく、投資家のカール・アイカーンの意見に耳を傾けるべきだ。

ヘッジファンドを運用するアイカーンは、人から畏怖され、尊敬される存在だ。アイカーンはApple株の0.93%を所有する。また、天然ガス開発会社Chesapeake Energyの株式の11%、栄養補助食品メーカーHerbalifeの株式の18%など、数多くの企業の筆頭株主の一人だ。彼が経営するナスダック上場企業Icahn Enterprisesは、投資運用の他、カジノ、自動車部品製造、鉄道、製油所など幅広い事業を行っている。

現在のIcahn Enterprisesの時価総額は93億ドル(約1兆1,500億円)で、NAV(純資産)に対して16%のプレミアムがついている。この金額がアイカーンの全ての事業、キャッシュ、投資の価値を表している。

世間でよく言われる「最も成功した投資家」というアイカーンに対する評価は正当だ。アイカーンが運用する投資ファンドの2004年以降の複利利回りは13%で、S&P 500のリターンを上回っている。また、Icahn Enterprisesは2009年の上場以来、株価の値上がり率がBerkshire Hathaway、Leucadia National、Loewsなどの同業を大きく上回っている。

しかし、ここに来て浮上したのが、彼がアメリカ合衆国の次期財務長官に就任するという話だ。共和党の大統領候補者であるドナルド・トランプが、アイカーンに財務長官就任を要請しているのだ。アイカーンは初め難色を示していたが、金曜日に自身のTwitter上でトランプの提案を受け入れると表明している。

もしもアイカーンが財務長官になったら、彼は投資資産を全て売却するか、運用を白紙委任する必要があり、Icahn Enterprisesは、アイカーンが長年培ってきたアクティビストとしての経験や、条件の良い投資案件を発掘するノウハウを享受できなくなる。

しかし、彼には株式投資以外にも優れた直観力があり、トランプが大統領選を戦う上で役に立つかもしれない。

アイカーンはこれまで株主総会で経営陣に反対投票を投じるよう株主たちに呼びかけることで巨万の富を築いてきた。彼は企業買収を活発に行っていた1980年代に次の様に述べている。
「これまで、多くの人が独裁者との闘いに敗れ死んでいる。私にできる最低限のことは、経営陣に対して反対票を投じることだ」

これは、1988年のTexacoの株主総会でアイカーンが発した、彼のお気に入りの台詞だ。しかし、現状ではIcahn Enterprisesの株主たちは、トランプの言葉を真に受けていないように見える。

8月8日の取引開始後、Icahn Enterprisesの株価は4%ほど下落したが、その主な要因は、同社傘下のエネルギー企業の株価が継続して下落したことと、中国懸念で市場全体が冷え込んでいることだ。アイカーンプレミアムはまだ健在で、投資家たちは彼が2016年にウォールストリートを離れ、ワシントン入りすることを信じていないようだ。

8月12日のCNN調査によると、アイオワ州の共和党の指名争いでトランプは支持率22%で、他の候補者を大きく引き離してトップに立っている。

しかし、ウォールストリートの総意は、時として真実を言い当てている。政治関係者やメディアの専門家たちは、今回のトランプやアイカーンの発言に、投資家がまるで興味を示していないことについて、注目するべきだろう。

文=アントワーヌ・ガラ(Forbes)/ 編集=上田裕資

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