2026年に最も有望とみられるAI関連株3銘柄は、おなじみの企業、エヌビディア、マイクロソフト、アルファベットである。
エヌビディアは2025年10月時点で時価総額が5兆ドル(約771兆円)を超え、AI半導体市場における圧倒的な優位性によってAIブームを牽引してきた。
マイクロソフトとアルファベットは、チャットボットなど生成AIアプリケーションの訓練と運用を支えるクラウドサービス基盤を提供することで、この需要を取り込んでいる。AIに数千億ドル規模の資金が投じられている現状では、これら3社が2026年に最大の恩恵を受ける企業となる可能性が高い。
本稿では、私がこれらの銘柄を選定した基準、それぞれがその基準をどのように満たしているか、そしてAIの将来についてアナリストがどのように見ているかを解説する。
2026年時点のAIの状況
ウォール街では今、AIバブルの存在と、その崩壊によって数十億ドル規模の価値が失われる可能性が盛んに議論されている。バブルの兆候とされるのは次の通りである。
・AIデータセンターへの巨額投資
・その建設資金をまかなうための債務の増大
・現金を豊富に持つテック大手が、自社製品やサービスを購入する顧客企業に資金を提供するという、循環的な資金の流れ
・エヌビディアやOpenAIといった業界大手の時価総額が急上昇していること、そして、AIに関連する実証実験の大半が低成果にとどまっているという現状
では、このAIバブルは2026年に崩壊するのだろうか。10月に公開した記事の中で、私は次の3つのシナリオを提示した。
1. 生成AIの成長が続く
2. ソフトランディングにより企業の評価額が調整される
3. OpenAIが破綻する。資金調達が途絶え、赤字事業の継続が不可能となった場合に突然全体が崩壊する
それから現在までにいたる間に、OpenAIがIPO(新規株式公開)を行う可能性が噂された。ロイターによる独自報道によれば、2026年または2027年に、同社は大部分の株式を非公開のままにする形で上場し、それにより約600億ドル(約9兆2500億円)を調達する可能性があるという。また、このIPOが実現すれば同社の時価総額は1兆ドル(約154兆円)を超える可能性がある。これが現実化すれば、先ほど述べた「OpenAIの破綻シナリオ」は後退することになる。
銘柄選定の基準
私は以下の基準をもとに3つの銘柄を選定した。
1. 力強い成長予測
2. 市場予想を上回る可能性
3. 高い収益性
この基準を満たす企業を選ぶことで、倒産リスクが高く、急成長だが利益の出ていない企業に投資するよりも、株価上昇によりリターンを得る可能性を高めることができる。
エヌビディアは売上高成長率、利益率、株価上昇率のいずれにおいても首位に立っている。マイクロソフトとアルファベットも成長性と高収益を両立しており、株価も上昇しているが、数字のインパクトではエヌビディアに劣る。ただし、エヌビディアは投資家の期待値が極めて高いため、リスクも大きい。
--{今後もGPU業界のリーダーとしての地位を維持する企業}--
1. エヌビディア(NVDA)
・株価(米国時間11月12日時点):193.80ドル
・2025年度第2四半期の売上高:467億ドル(約7兆2000億円)
・2025年度第3四半期の売上高成長率:55.6%
・純利益率:56.5%
事業概要
エヌビディアは、AIチャットボットやその他の生成AIアプリケーションの訓練と運用に使用されるGPU市場の約90%を支配している。また、データサイエンスや高性能コンピューティング、モバイル、自動車向け用途に向けてシステムオンチップやAPIも提供している。
エヌビディアが有力候補である理由
エヌビディアは2023年5月に生成AIブームの到来を示唆する成長予測を発表したが、その当時と同様に、同社は今後もGPU業界のリーダーとしての地位を維持するとみられている。世界中でAIインフラ投資が加速する中、この銘柄が最有力とされる理由は以下の通りだ。
成長予測を上回る可能性
エヌビディアの経営陣は、世界のデータセンターに対する設備投資額が、2025年の推定6000億ドル(約92兆5300億円)から、2030年には最大4兆ドル(約616兆円)へと約567%増加すると予測している。これは、ナスダックがまとめた短期的な市場予想のペースを上回るものだ。また、Open Data Science Conferenceは、GPUの寿命(1~3年)による更新需要や、エージェント型AI、フィジカルAI、ロボティクスなど複雑化するAIモデルの登場が、同社にとっての追い風だと指摘している。
成長予測
データセンター向け半導体市場で圧倒的なシェアを持つエヌビディアの製品は、AI開発の主要基盤として選ばれ続けている。持続的な需要を背景に、ウォール街のアナリストは同社株に強気な見方を維持している。
収益性
エヌビディアは半導体需要の高まりを巧みに収益に変え、売上高、利益ともに急拡大している。19年間にわたりエンジニア向けソフトウェアを提供してきたことも、同社の競争優位を支える要因である。
--{法人向けソフトウェア市場における優位性と、世界第2位のクラウド事業者としての地位を占める企業}--
2. マイクロソフト(MSFT)
・株価(11月12日時点):511.14ドル
・2025年度第3四半期の売上高:777億ドル(約11兆9800億円)
・2025年度第3四半期の売上高成長率:18.4%
・純利益率:35.7%
事業概要
マイクロソフトは、WindowsやMicrosoft 365などのソフトウェア、クラウドサービスのMicrosoft Azure、XboxやSurfaceなどのデバイスを開発・販売している。同社はクラウドファーストのイノベーション、そしてAIをその企業戦略の中枢においている。
マイクロソフトが有力候補である理由
マイクロソフトは、法人向けソフトウェア市場における優位性と、世界第2位のクラウド事業者としての地位を活かし、AIをそれらすべての製品群に統合することで収益化を進めている。
成長予測を上回る可能性
Financial Contentによれば、マイクロソフトは他のどのクラウド企業よりも速いペースでデータセンターの拡張を進めており、これまで同社の成長を阻んでいた供給制約の解消を目指している。AIチャットボットのCopilotの改良が進めば、予想を上回る収益成長が見込まれる。
成長予測
Azureを含むクラウド事業は前年比約40%の高成長を維持しており、Quartzによれば、アナリストたちはその年次利益が2桁台の成長を続けると予測している。マイクロソフトはこれまでも市場予想を上回る決算を発表してきた。
収益性
ナスダックによれば、マイクロソフトは高い営業利益率を維持しており、AIインフラへの戦略的投資が、既に主力収益源であるクラウド部門の成長と収益拡大をさらに後押しする見通しである。
--{生成AIを中核事業である検索エンジンに統合し、クラウド部門でも強い成長を見せ続けている企業}--
3. アルファベット(GOOG)
・株価(11月12日時点):287.43ドル
・2025年度第3四半期の売上高:1024億ドル(約15兆7900億円)
・2025年度第3四半期の売上高成長率:16%
・純利益率:34.2%
事業概要
アルファベットは、検索広告、クラウドサービス、自動運転分野のリーダーだ。同社はアマゾン、アップルに次ぐ世界第3位のテクノロジー企業であり、利益規模では世界最大、そして世界で最も時価総額の高い企業のひとつである。
アルファベットが有力候補である理由
アルファベットは、生成AIを同社の中核事業である検索エンジンに統合し、Google Cloud部門でも強い成長を見せ続けている。
成長予測を上回る可能性
当初はAIによる競争圧力を受けるとみられていたアルファベットだが、同社はそのAIを活用して検索性能の改善に成功した。CNBCによれば、Google CloudはOpenAIやメタを顧客として獲得しており、アナリストの予測を上回るペースで市場シェアを拡大できる可能性がある。
成長予想
CNBCによると、アルファベットの経営陣はAI需要の高まりに対応するため、2026年に設備投資を「大幅に増加」させる計画を示している。これは強力な成長基盤となるだろう。
収益性
Search Engine Journalによれば、アルファベットはAI検索機能の収益化に成功し、高収益を誇るクラウドサービスが成長を拡大していることも、株価の上昇要因となっている。アナリスト予測を継続的に上回る限り、その上昇余地は大きい。
--{2026年にAI市場はどう変わるか、アナリストの見解}--
2026年にAI市場はどう変わるか、アナリストの見解
アナリストたちは、2026年にクラウド分野の設備投資が鈍化すると予想しており、企業によってその度合いが大きく異なるとみている。デルオロ・グループのアナリスト、バロン・ファンは次のように述べている。
「過去3年間における未曾有の拡大期間を経て、米国のハイパースケーラー各社は、投資対効果と減価償却費の増大が利益率に与える影響に一層注目している」
ウォール街大手による、クラウド設備投資額の成長率に関する予測は次の通りである。
・ゴールドマン・サックス:2025年の54%から、2026年は26%に鈍化
・モルガン・スタンレー:2025年の56%から、2026年は16%に鈍化
・エバーコアISI:2025年の64%から、2026年は18%に鈍化
・デローログループ:2025年の「50%超」から、2026年は21%に鈍化
IBDによれば、2026年における設備投資額の成長率はアマゾンとグーグルで約11%、メタは42%、マイクロソフトは22%、オラクルは21%と予想されている。
急拡大する投資ペースに収益化が追いつかないケースが増えるなか、各社の経営陣はより慎重な姿勢を取っている。プレトリアン・キャピタルはIBDに掲載したブログ記事の中で、「ハイパースケーラーのデータセンターは、AIインフラの年間減価償却費を賄うだけでも現在の10倍の収益を生まねばならない」と指摘している。
一方で、長期的にはエヌビディアが依然として強気の見通しを示している。同社のコレット・クレスCFOは第2四半期決算説明会で、「2030年代末までにAIインフラ投資は3兆~4兆ドル(約462兆円~616兆円)規模に達するとみている」と述べた。
「年次ベースでのAIインフラ投資は今後も増加すると予想している。その理由は、桁違いの計算能力を要するエージェント型AI、世界で拡大するソブリンAIの構築、企業によるAIの導入、そしてフィジカルAIやロボティクスの登場などだ」
結論
AIバブルが膨らむ中で、アナリストは成長鈍化の兆しを警告している。ただし、その時期と規模を正確に予測することは難しい。クラウドサービスやAI半導体を提供し、急成長かつ高収益の企業の株価は、ブームが減速する前に今後も上昇を続ける可能性がある。その中でも、エヌビディア、マイクロソフト、アルファベットが最有力候補である。



