職場におけるリーダーの地位とは、長い間、その立場をはっきりと示す「目に見える印」と密接に結びついてきた。オフィスに入ったときに真正面に席のある人、名簿の一番上に記載されている名前、動き始める前に誰もが指示を待つ声、といったものだ。これは、リーダーの権威が、その人物への信頼ではなく、肩書きから生まれるという考えに基づいたモデルだ。
しかし、今日の企業はかつてないほど迅速に動き、組織も、フラットかつネットワーク化している。肩書きは、部下の心のドアを開ける役割は果たすが、もはや、それだけでは部下がついてきてくれる保証はない。
地位に伴う権威は、「相手を支配している」という危険な幻想を生み出す。これは、部下たちが義務感から上司に従う状況を当然と考えるものだ。だが、このような服従は底が浅いものであり、複雑な環境に必要とされるコミットメントや創造性を引き出すことはない。権力をもたらしていた地位に変化があった場合、あるいはそのリーダーがオフィスの部屋から出ていったとたんに、権威は消え去ってしまう。
真のリーダーシップのありようは、これとはまったく異なる。それは地位ではなく、影響力に依って立つものだ。この場合、部下が従うのは、リーダーの判断や価値観、成功のためにリソースを投じる姿勢に敬意を抱くからだ。
これは、地位ではなく、自分が築き上げるものによって人を率いるタイプのリーダーシップだ。障壁を取り払い、部下が存分に持ち味を発揮できるスペースを与える「静かなリーダー」は、常にスポットライトの当たる場所にいたがるリーダーよりも、より深いところに届く影響力を発揮する。
まずは、こんな問いかけをするところから始めてみるといいだろう──もし明日、自分の肩書きが失われたとしても、部下たちは自分についてきてくれるだろうか?と。この問いかけは、自分のリーダーとしての地位が、部下からの信頼に依って立つのか、それとも上下関係に依って立つのかを即座に明らかにしてくれるはずだ。



