「目に見える印」を越えたリーダーシップの再定義を
リーダーとしての地位を、オフィスの真正面にある席とイコールで結ぶのは、古くからの慣習だが、これはもはや今の仕事の在り方には合っていない。「目に見える印」は人の注意を引くかもしれないが、実質的なインパクトが生じるとは限らない。状況が不確定で互いに関連し合っている場合、部下が従うのは、単にいつも目にしている人ではなく、自分が信頼している人だ。
影響力に基盤を置くリーダーシップは、成功の基準も刷新している。リーダーがいかに他から抜きんでた存在になっているか、という点ではなく、リーダーがいない時にどれだけ強力にシステムが機能するか、という点が重要になっている。
こうした視点は、日々の行動も大きく変えるものだ。自分を、部下の世話係と捉えているリーダーは、コーチやメンターとして多くの時間を費やし、他のメンバーがリーダーとなる場を作り出そうとする。自分の果たす役割をことさらにアピールするよりも、自分の与える影響を大幅に増加させることに集中しているのだ。
個々のリーダーにとって、「地位に価値を置く思考」からの移行は、小さなところから始まる。例えば、返事をする前に相手の話をしっかりと聞く、ミスをしたら率直に認める、他の人の貢献が認められるよう配慮を怠らない、といったことだ。こうした行動は当たり前のようにも思えるが、そうしたことこそが信頼を構築する礎となる。
複数の組織がお互いに助け合う形が当たり前となりつつあるなかで、成功を収めるリーダーとは、「権威は借り物であり、自分の所有物ではない」ことを理解する者だろう。このような状況では、役職の威光は色あせる。その一方で信頼は、時を経ても残る。
未来は、オフィスの真正面にある席からは生まれない。むしろ、ネットワークを生かしてリーダーシップを発揮する者の手にあるはずだ。


